08/02/12
■ 喀痰からAeromonas
【質問】
 分離材料が喀痰で, しばしばAeromonas sp.と同定されて出てくることがあります。Aeromonasは食中毒菌としてよく知られていますが, 喀痰から出てきても不思議ではないのでしょうか??? それともコンタミで誤同定されて出てきているのでしょうか??? (釣菌の時点で)

【回答】
 Aeromonas属菌は水系の常在菌で, 河川や湖沼または河口付近の汽水域, 沿岸海水などからも分離され, あらゆる水環境に存在しているといわれています。通常ヒトへの感染は, 汚染された魚介類や水産食品, 飲料水などの摂取による食中毒などが一般的ですが, 喀痰から分離されることもあります。侵入経路の一つとしては, 自然界に広く分布しているAeromonas属菌が食品とともに口腔内に取り込まれ, 痰の喀出時に付着したり, あるいは誤嚥によって下気道に侵入することも考えられます。またAeromonas属菌は本来, 淡水魚やカエル, ヘビなどの冷血動物の病原菌とされ, ヒトへの感染は小児や免疫力が低下した患者に多いと言われています。健康人の糞便からも数%の割合で分離されるという報告もあり, 下痢症状の有無に拘わらず, 本来自身の腸管内にもっていた菌が喀痰内に出現するという経路も推定されます。回答者の施設では, 平均すると年間1_2例ほどの喀痰からAeromonas属菌が分離されていますが, 呼吸器感染における起炎性は不明なものが多く, 臨床的意義は必ずしも明確ではありません。しかし, 中には透析患者の喀痰から連続して有意な菌量で分離された例もあります。文献的にも肺炎の症例報告が認められますので, 喀痰から出てきても不思議はないと思います。

“コンタミで誤同定されて出てきているのでしょうか???”という質問ですが, これは釣菌の時点で複数の菌が混じってしまったという意味でしょうか??? Aeromonas属菌はVibrio科に属するオキシダーゼ陽性菌ですから, 腸内細菌などとオキシダーゼ陽性菌が混じってしまったことを想定されているのでしょうか??? いずれにしても疑わしい場合にはグラム染色して染色性と形態を確認し, 再度分離培養を実施してください。再分離培養で得られた単一の菌集落を用いて同定し, 確認することが大切です。

(公立玉名中央病院・永田 邦昭)


戻る