07/09/25
■ 喀痰から大腸菌が
【質問】
 はじめまして。基本的な質問なのですが, 喀痰培養から時々Escherichia coliが検出されることがあります。これは完全に本人, または医療従事者からの接触感染と考えてもよろしいのでしょうか。よろしくお願いします。

【回答】
 E. coliをはじめとするグラム陰性桿菌による呼吸器感染症では汚染ネブライザー使用での感染, 尿路や消化管感染巣からの血行性感染などがあります。また口腔内には食物, 飲料水から一次的に菌が定着している場合もあります。喀痰に限らず, 臨床材料から検出される菌種 (特に自然界で多岐に生息する菌種) を患者自身がもつ菌種による感染なのか, または病院内 (医療従事者, 病院環境) からの獲得感染なのかを決定するのは, 厳密に言えば極めて困難です。感染経路を確定するために, 菌体DNAパルスフィールド電気泳導法(PFGE)が用いられますが, 一般の検査室ではその採用にも限界があります。

(1) 検査材料から検出された菌集落の内, 何個かの菌集落を選別してPFGEを実施するか (選別した1つの菌集落を代表にして実施される場合が多いが, 検出されたすべての菌集団を代表しているか否か, 確証はない)。

(2) 医療従事者からの接触感染を疑う場合: 医療従事者のどの部位 (糞便, 手指など), どの時期, または時間から検出するか。

(3) 病院環境を疑う場合: 病院環境のどの場所, またはどのような器具からと想定して菌検出を実施するか (場所の特定が困難)。

(4) 自家感染を疑う場合: 患者のどの部位から検出された菌株を使用するか (感染巣が明確な場合は確定できるが, この場合でも単一クローンの菌株による感染とは限らない)。

このような現実から, 単一の菌株でしか解析できない手法では感染経路を確定することは困難となります。最後に, 時々とありますがE. coli による肺炎は約5%を占め, これはKlebsiella pneumoniaeに次ぐ頻度であるとの報告もあります。

(琉球大学・仲宗根 勇)


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