|
【質問】
ある医師からの問い合わせで, 喀痰中に貪食白血球を認めるような状態の時,
検体の喀痰を採取した後,
その貪食白血球はどのような働きをするのかというものがありました。
(1) 採取後も細菌を貪食し続けるする
(2) 採取後は貪食しない
(3) 上記以外のなんらかの働きをする
調べられる限りは調べましたが, 適当な文献はみつかりませんでした。ご指導の程,
よろしくお願いいたします。
【回答】
“喀痰を採取した後の貪食白血球はどのような働きをするのか”という質問ですが,
喀痰は生体内に侵入した微生物や異物の処理に関わった白血球やフィブリン, 気道粘液などの塊であり,
生体内で細菌などを貪食した白血球はすでにその役割 (働き) を終えて体外へ排出されたとも考えられます。しかし,
体外に排出された後も, 新鮮な白血球であれば, ある程度貪食は続けるものと推測されます。その一例として当院での経験を紹介します。喀痰培養を実施する際に,
痰の周囲に付着した上気道の常在菌を取り除く目的で, 滅菌生理食塩水を用いて喀痰を洗浄することがあります。その結果,
痰の喀出時に付着した常在菌は洗い落とされ, 白血球に取り囲まれたり, あるいは貪食を受けた起炎菌が選択的に培養されるというものです。ただし誤嚥性肺炎などでは,
上気道常在菌を唾液とともに吸入したことによる炎症であるため, 種々雑多な形態の菌の貪食像が認められ,
洗浄しても容易には常在菌は洗い落とされません。しかし中には, 種々雑多な菌の貪食像が認められるにもかかわらず,
洗浄することによって菌が消えてしまうことがあります。そのような喀痰をよく観察すると,
菌を貪食している白血球は一部であり, 満遍なく存在しているわけではありません。喀出された痰の表面にある白血球だけが貪食し,
洗浄によって白血球ごと菌が洗い落とされたのではないかと考えられる所見です。つまり体外に排出された
(喀痰を採取した) 後の白血球が, 喀出時に付着した喀痰表面の常在菌を貪食したと推測される所見だと思います。あくまで推測の域を出ませんが,
このような例が喀痰採取後の白血球の働きをうかがわせる一つの手がかりになるのではないかと思います。
また材料は異なりますが, 血液培養において, 培地と血液量の割合を10:
1以上に希釈するように定められているのは, 血液中の白血球などの食細胞や抗体または補体などの殺菌成分を十分量の培地で希釈し,
影響を少なくするためであるといわれています (抗菌薬投与中であれば薬剤を希釈する目的もあります)。
体外に出た (採取された) 白血球も, 生体内にいる時ほど寿命は長くないものの,
しばらくの間は貪食を続けるものと推測されます。
(公立玉名中央病院・永田 邦昭)
【質問者からのお礼】
大変参考になる回答ありがとうございます。今回の資料を参考に, 私どもでも検証を行ってみて臨床ドクターに返答してみようと思います。機会がありましたら,
今後ともご指導よろしくお願いします。
|戻る|
|