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【質問】
●●県▲▲市立病院の■■といいます。よろしくお願い致します。
当院では, 喀痰の品質管理にGecklerの分類を採用しています。しかし, 他の施設に確認すると,
Gecklerの分類とMiller-Jonesの分類の両方を採用している施設が多いことがわかりました。
(1) 検査結果を報告する上で, この2つの分類を共に採用することは意義があるのでしょうか???
私個人としては, 顕微鏡観察で好中球と扁平上皮の割合が把握できていれば問題ないと考えていますが・・・
(2) 別の質問になりますが, 気管支鏡の検体で用いるGeckler分類の (6) の意義がよくわかりません。他の(1)〜(5)の分類とは別の物
(基準) と考えてよいのでしょうか???
以上, 2点について教えていただきたいと思います。お忙しい中, 申し訳ありませんがよろしくお願い致します。
【回答】
(1) 検査結果を報告する上で,この2つの分類を共に採用することは意義があるのでしょうか???
Gecklerの分類は, 感染に伴う炎症の指標となる白血球数と雑菌混入の指標となる扁平上皮数を基準に,
顕微鏡的に喀痰の品質を評価する方法であり, 質問者の言われるとおり, これだけでも臨床上は問題ないと思われます。ただMiller
& Jonesの分類を併用する意義もあると思います。Miller & Jonesの分類は顕微鏡的な評価
(Gecklerの分類) をする前に, 肉眼的に痰の性状を評価する方法です。これは喀出された患者さんはもちろんのこと,
看護師や臨床医の目でも観察されます。つまり, より普遍的な品質評価法であり,
医療チーム全員で共有できるものだと思われます。実際に, カルテにMiller &
Jonesの分類が記載されていることもあります。また, Gecklerの分類は通常, 痰の膿性部を選んで塗抹した結果であり,
例えばMiller & Jonesの分類でP3とM2の痰が, Gecklerの分類では同じ5群の評価になる可能性もありますが,
実際には明らかな膿性痰(P3)であったのか, 粘液や唾液の中に膿性部が少量浮かんでいる程度(M2)であったかのかでは,
受ける印象も異なるものと思われます。ただし肉眼的評価には個人差が生じやすく,
外観は膿性に見えても顕微鏡で確認すると扁平上皮の塊であったということも稀にあるため,
喀痰の品質評価は「肉眼的評価」と「顕微鏡的評価」のふたつを加味して総合的に判断することが大切だと思います。
2つの分類の内, どちらか一方のみを選ぶとすれば, 顕微鏡的分類の方が優先するかも知れませんが,
ふたつ共採用するか否かは各施設の運用上の問題にもなりますので, 最終決定にあたっては臨床と相談されてみたらいかがでしょうか。
(2) 気管支鏡検査で用いるGecklerの分類の(6)の意義がよくわかりません。他の(1)_(5)の分類とは別の物
(基準) と考えてよいのでしょうか???
Gecklerの論文を読むと, 経気管吸引痰 (TTA: transtracheal aspirate)
の分類では5群と6群しか存在しません。Gecklerは100例の入院患者の喀痰とTTAをペアーで採取して,
それぞれのグラム染色標本で1_6群までの群別を行い, 培養成績との相関を見ています。喀痰は1_6群まで,
すべての群に分類されていますが, TTAは前述の通り5群か6群しか存在せず, 汚染のない操作で採取されたTTAは5群か6群のいずれかに分類されるとしています
(明らかに汚染の認められたTTAは検討対象から除外しています)。また, TTAは検体採取時に生理食塩水を気管内へ注入するため,
膨張しているとも述べています。つまり生理食塩水で希釈された結果, 白血球数が見かけ上減少し,
6群に分類される検体もあるのではないかと推測されます。ですから, 気管支鏡検査で採取されるTTAや気管支肺胞洗浄液などの顕微鏡的分類は,
喀痰の1_6群の分類とは幾分違った意味合いを持つものと推測れます。Gecklerは不適切な検体
(喀痰) の培養検査を削減するためにこの検討を実施していますが, TTAについては,
検体採取に侵襲的な操作を必要とするため, “全例培養すべきである”と述べた上で,
TTAの顕微鏡的検査は, 口腔咽頭からの汚染の有無を確認するために実施すべきであるとしています。
〔参考文献〕
Geckler RW et al.: Microscopic and bacteriological comparison of paired
sputa and transtracheal aspirates. J Clin Microbiol 6 : 396〜399, 1977.
(公立玉名中央病院・永田 邦昭)
【質問者からのお礼】
ご回答いただきありがとうございました。臨床の先生と相談して,
今後の検査方法を決めたいと思います。どうもありがとうございました。
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