■ 喀痰培養の菌量の表記法 | |
【質問】
喀痰の定量培養法では, 10^7 CFU/ml以上存在する菌を起炎菌とみなすとありますが, 10^7 CFU/mlは“3+”と考えていいのでしょうか??? 細菌検査から離れて10年ほどブランクがあります。今は生菌数で表すのが一般的なのですか??? それについて記載している文献等があったら教えてください。 【回答】 基本的に, 定量値と“1+・2+・3+”の表記法とでは, 大まかな意味では相関性はあると思いますが, 正確な互換性のあるものではないと思います。前者の菌量表記法は“1 ml中に10の何乗個の集落形成可能な菌体 (生菌数) が存在するか”を表すという一定の基準がありますが, 後者には明確な基準はありません。「−」から3+までの4段階表記をしている施設もあれば, 「−」から4+までの5段階表記, または1+の下に“少数”や“極少数”などの表記をしている施設もあります。あくまで検査材料を接種した培地の上で発育した菌の割合を示すものであり, 例えば, 発育した菌量が培地全体の3分の1以下なら1+, 3分の1から3分の2の間なら2+, 3分の2以上なら3+という大まかなものです。また, 接種する検体の量や使用する白金耳の内径の大きさなどの規定もありませんので, 施設により1+や3+の意味する菌数は少しずつ異なるものと考えられます。 「107 cfu/mlは”3+”と考えていいのでしょうか???」 というご質問ですが, 10^7 colony forming units (cfus)/mlと3+はそれぞれ高い濃度で菌が存在することを意味する数値であることを考えれば, この数値の組合せで見る限りには大きな間違いはないようにも考えられますが, 1+や2+と記載された中にも定量培養すると10^7 cfus/mlの菌量を示すものがあります。通常の喀痰培養では痰の一部を白金耳で採取して培養しますが, 定量培養法は喀痰を化学的または物理的に溶解して均質化したものを培養します。一つには喀痰中の菌の分布が必ずしも均一ではないために, このようなバラツキが生じる可能性があります。また均質化することによって, 喀痰周囲に存在する唾液成分がより多く混入し, 常在菌数が増加するということも推測されます。施設によって喀痰の塗り広げ方も様々であり, 発育菌量の判定にも個人差があります。例えば, ある人は1+と判定するところを, 別の人は2+と判定してしまう可能性もあり得ます。したがって単純に10^7 cfus/mlが3+に相当するということは言えないと思います。 「今は生菌数で表すのが一般的なのでしょうか???」というご質問ですが, “生菌数”は定量値と理解してよろしいでしょうか??? 定量培養の方が菌量表記の基準がはっきりした定量値で表されるため, 個人差や施設間差が少ない方法であると考えられます。正確な数値はよく分かりませんが, 定量値で菌量表記する施設が増加してきていると考えられます。 (公立玉名中央病院・永田 邦昭)
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