09/06/19
■ 喀痰検体の保管
【質問】
 平素より, さまざまなことを学ばせていただいております。

 私の勤める診療所では, 塵肺症の患者さまが多く, 肺炎・肺結核が合併しやすいため, 3か月に一度, 喀痰細菌検査(一般細菌・抗酸菌)を行っております。さて, 採取後の喀痰を外注先の検査センターが回収に来るまでの間, 専用の冷蔵庫で保管しております。このように冷蔵での保管が必要なのでしょうか??? 私としては, 乾燥環境になければ, 室温での保管で問題ないのではと考えておりますが, いかがなものでしょうか??? (なお, 採取した検体容器はふたが閉まるもので, 開放状態にはありません)。是非, ご教授下さい。

【回答】
 微生物を培養するための臨床検体の適切な保管温度は, 担当医が検査目的とする微生物の種類によって異なります。凍結 (−80℃, −20℃), 冷蔵 (4℃), 室温, ヒト体温などが代表的な保管温度でしょう。冷蔵は, 多くの細菌が増殖しない, 死滅もしない (細菌の濃度が変化しない) という理由で広く使われる方法です。しかし万能ではなく, 一部の細菌 (淋菌やずい膜炎菌) は冷却すると死滅します。保管する時間によっても保管方法が異なってきます。ウイルスは短い時間であれば冷蔵ですが, 培養するまでに長い時間経過する場合には凍結 (−80℃) が必要です。塵肺症の患者が多いということなので, 検査の目的の細菌が抗酸菌であれば室温でもよいと考えますが, 肺炎の場合には冷蔵が無難だと思います。

 それと, 検査が外注ということです。いわゆる「登録衛生検査所」に検査を依頼する訳で, 登録施設には法令によって検体保管の厳密な記録が要求されています。貴方の病院と外注先との間に交わされた契約の内容 (外注先が配布する案内資料) がその通りに実施されているか否かを確認できる記録を残すことが必要なのです。登録衛生検査所が契約内容 (案内資料) をかってに変更することは難しいということも認識してください。

(琉球大学・山根 誠久)

【質問者からのお礼】
 詳細なご返答ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。


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