07/08/22
■ 感染症法に基づく微生物の保管
【質問】
 先生方の大変丁寧なお話を毎回参考にさせて頂いております。病院検査室で細菌検査を担当しております。改定された感染症法につきまして, 質問させて頂きたく, この度メールいたしました。

 当検査室では, 結核菌検査は塗抹・培養 (小川培地等) を行っていますが, 培養陽性時の抗酸菌の同定, 感受性検査やPCR検査などは外注しております。その際, 抗酸菌の同定結果が出るまで, 菌株をひと月以上保管しております。また, 結核菌の同定がついた株も保管しております (保管の理由は, 検査の追加に対応する為や保健所などの問合せに対応する為です)。新法の中で結核菌は「四種病原体等」に含まれ, 保管に際して届出義務はないようですが, 管理する施設基準の中で, (1) 密閉容器に入れ, 保管庫で保管, (2) 保管庫等の施錠とあります。

質問 (1)
 当検査室では小川培地に発育した菌株をふ卵器で保管しております。「密閉容器」とはどのようなものにしたらよいのでしょうか???

質問 (2)
 「保管庫の施錠」とは, 当検査室の場合ではふ卵器に鍵をかけるということになるのでしょうか??? 細菌検査室は検査室内にあります。検査室に入る扉には鍵がありますが, 検査室内から細菌室に入る二重扉には鍵はありません。

不勉強で心苦しいのですが, 何卒よろしくお願い申し上げます。

【回答】
 2007年6月1日から施行された法律では多剤耐性結核菌 (INHとRFPに耐性) は三種病原体, これら2剤に“感性”を示す結核菌は四種病原体に分類されています。三種病原体に分類される結核菌は届出の必要があります。抗酸菌の同定, 薬剤感受性結果が判定される期間, 以下の様に取り扱うとよいと思います。

  1. 薬剤感受性結果が判定されるまでの期間: 四種病原体として取り扱う。
  2. 結核菌でINHとRFP耐性株: 三種病原体
  3. 結核菌でINH, RFP感性株: 四種病原体
菌株の保存 (密封容器)

 小川培地をふ卵器で保存する方法は菌株の死滅が早く適切ではありません。菌株の保存は結核菌に拘わらず乾燥を防ぎ, 低栄養状態で保存する方法が長期に保存できます。

 密封容器: 密封容器に特に指定はありません。結核菌のみが保存対象であれば, 精製水に濃厚に混濁させ, スクリューキャップ付き試験管またはセラムチューブなどのネジ付き容器で室温でも保存可能です。

 保管庫の施鍵: セラムチューブなどの小さい容器で鍵付きディープフリーザーでの凍結保存が理想的ですが, ディープフリーザーがない場合には鍵付きキャビネット (固定または大型が望ましい) や鍵付き冷蔵庫などでも可能です。

 検査室の鍵:「管理区域に人がみだりに入らない処置」が四種病原体を取り扱う検査室では必要です。病原微生物だけに限らず, 試薬 (劇薬) 管理の目的からドアに新たに鍵を設置する必要があります。

 今回の法律は, 微生物の施設外流出を防ぐ目的です。保存用設備や鍵の設置が必要と判断されるのであれば, 病院管理部門に要求するべきでしょう。詳細な基準は厚生労働省ホームページを参照して下さい[http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou17/0.html]。

(琉球大学・仲宗根 勇)

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