■ 結核菌のPCR検査 | |
【質問】
外科病棟に勤務する看護士です。PCR法について, どのような検査法なのか詳しく教えてください。 先日, 病棟で“ガフキー2号だった方のPCRが陰性”ということで, マスク着用フリーとなりましたが, PCR「陰性」なら感染しないのでしょうか??? 低レベルな質問ですがよろしくお願いします。 【回答】
(2) さて, 結核 (抗酸菌) の検査ですが, 実際には塗抹, 培養, PCR検査を併用して行っています。検体は喀痰が多いと思いますが, 喀痰は粘性が高く結核菌は偏在していることが多いようです。また, 結核菌は栄養要求性が高く, 増殖スピードが遅いとされております。したがって, 前述の3工程の前に, 前処理として均一 (均質) 化し, 雑菌処理 (抗酸菌以外の菌を死滅させる) を行います。塗抹にも直接法と集菌法があります。今回ガフキー2号とありましたが, これは集菌法でしょうか, 直接法でしょうか??? また, 染色はチール・ネルゼン染色でしょうか, 蛍光染色でしょうか??? チール・ネルゼン法は抗酸菌であれば染色されます。したがって, 「陽性」であっても結核菌とは限りません。 (3) PCRは高感度, 高特異性ですが, 抽出の工程で目的のDNAが回収されないと増幅出来ません。すなわち検体中の菌量が微量の時は, 抽出時の確率によって「陽性」あるいは「陰性」となることがあります。したがって, 今回の事例は1. 結核菌群, アビウム, イントラセルラー以外の抗酸菌の可能性, 2. 実際, 標的DNAが極微量であったため, 感度未満であったという2通りの可能性があります。 (4) 結論として, 「PCR陰性」といっても菌の存在を完全に否定できるものではありません。培養の結果や定期的な塗抹検査の結果と併せて, 医師が総合的に判断をし, 感染の可能性を判断すべきです。それまではマスクの着用をお勧めします。 (ロシュ・ダイアグノスティックス・林 邦彦) |