08/04/08, 09
■ 健康食品原料と一般生菌
【質問】
 私は健康食品の原料を海外から輸入している商社を経営しています。原料はほとんど, 根菜, 葉, 果実の乾燥粉末やそれらの水/エタノール抽出物です。野生のハーブもあれば, 農家の栽培したものもあります。

 海外の供給業者から送られてくる規格書には, 微生物検査データとして, 一般生菌が乾燥粉末では「50,000個/g以下」, エキスでは「10,000以下」と表示されてきます。滅菌方法は, 素材を次亜塩素酸ナトリウムで消毒し, 乾燥のために加熱する工程での加熱殺菌が普通です。ところが健康食品のメーカーからは, 「食品衛生法」で規制されている“飲料水”に対する数字, 3,000以下を根拠にして, それ以上の菌数の原料を拒否されます。厳密にいえば, このような植物の加工原料には, 一般生菌数の上限は法的に規制されていないと理解しています。そこで, 下記の質問をさせていただきます。

(1) 菌は無菌に近いほうがいいに違いありませんが, 一般生菌が5万個にある原料は健康に有害なのでしょうか???

(2) 菌数3,000以下という要求には, なにか根拠があるのでしょうか??? 例えば, 菌数1万でも機械の汚染原因にならない, 消費者の健康にも害はないといった根拠はないのでしょうか???

(3) 一部の原料に, 耐熱性の高いバチルス・サブチルス菌 (枯草菌) が付着している根菜があり, これが常に一般生菌として検出されます。この菌には病原性はない, むしろカビなどを退治する“有益菌”とさえ言われていますが, 加工業者はそれをまったく考慮してくれないので困っています。海外の供給業者からは, この菌の滅菌は放射線殺菌法しか方法はない, 130度以上の高温殺菌だと有用成分まで破壊し, 原料自体を焦がすので商品価値を失うと回答してきており, 対策に苦慮しています。そこで:

3-(a) 枯草菌の存在をあくまで是認するように加工業者を説得すべきかどうか。

3-(b) 枯草菌を一般生菌から除外して分析書を作成して提示するということで解決できるでしょうか。

以上, 3点についてご回答賜りますようにお願い申し上げます。

【回答】
(1) 例えば,「弁当及びそうざいの衛生規範」では, 生菌数は検体1 gramにつき100,000以下となっています。この場合重要なのが, ヒトに危害のある病原菌がいないことです。また別の例として, 第15改正日本薬局方の「生薬及び生薬を配合した製剤の微生物限度基準値」では, 熱湯で処理して用いる生薬及びその製剤は10^7 CFU/gramまたはCFU/mLであり, その他の生薬及びその製剤では10^5 CFU/gramまたはCFU/mLと記載されています。

(2) この点についてはわかりません。“菌数3,000以下という要求”をしているメーカーの決定ですので, 直接聞いてください。なお, 飲料水に用いる原水は1 mlあたり集落数として100個以下という基準はあります。

(3) この質問内容からは, 加工業者がバチルス・サブチルス菌 (枯草菌)を病原菌として捉えているのか, あるいは品質を劣化させる原因菌と看做しているのかわかりません。取引契約ですので, 求められる品質を取引先に再度確認することが必要だと思います。もし加工業者が枯草菌を“病原菌と勘違い”しているでしたら, 納豆は枯草菌を利用して作られていることを説明してください。

(日水製薬・小高 秀正)


【質問者からのお礼】
 有難うございました。参考にさせていただきます。


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