07/11/28
■ 検体採取日で変化する薬剤感受性
【質問】
 病院の細菌室勤務の技師ですが, 一つ質問させていただきます。薬剤感受性についてご教授ください。

 3日連続で同一検体を培養して同定した結果, 同一菌種が認められました。この時採取日の違いで感受性の結果が, SからR, もしくはRからSと変わることはあるのでしょうか??? また, あるとしたらその原因として考えられることは何でしょうか??? 宜しくお願い致します。

【回答】
 大変面白い質問だと思います。私も同じような興味をもっています。

 同じ種類の検体を3日連続で培養し, 同じ種類の細菌を分離し, 薬剤感受性試験を行ったら, その判定結果が感性から耐性, 耐性から感性に変化した・・・もし, まったく同じ細菌細胞 (クローン細胞) を試験して, 結果が変動したのなら, それは“貴方の検査方法に再現性がない”という精度の問題だと言えます。次に, 検体に含まれている細菌細胞の集団が元々ひとつの細菌細胞 (クローン細胞) に由来するものであるのか否かが問題となります。感染尿1 mlには100,000個の細菌細胞が含まれる訳ですが, これらの細菌細胞がすべてひとつの細菌細胞に由来しているのか否かということです。検体の種類, 感染の種類 (特に, 急性か慢性か) などが示されていないので, 一概には言えませんが, 検体に含まれていた細菌細胞集団の均一性が問題になると思います。かつて私も, 火傷の患者から分離されるセラチア菌のO抗原を追跡したことがありますが, 検査日 (検体採取日) 毎に変化して行くのに驚いた経験があります。Clinical and Laboratory Standards Institute (CLSI) の薬剤感受性試験で, 3〜5個の菌集落を釣菌して被検菌とするという記載部分も, 分離培地に発育した菌集落の集団が必ずしも均一なものではないという前提に立っています(もちろん, クローン化された菌株を試験する時には, 3〜5個を釣菌する必要はないのです)。

 検体に含まれる細菌集団の均一性を検討してみることを勧めます。特に慢性の経過をもつ患者では, 長い治療経過のなかで, 様々に変異した細菌細胞が混在し, 我々検査する側は, 偶然のなせるわざで被検菌を釣菌しているのかもしれません。

(琉球大学・山根 誠久)


戻る