08/07/22
■ 血液培養ボトルの選択について
【質問】
 小さな病院でICDをしています。琉球大学の先生にお尋ねします。

 琉球大学では, 好気性ボトルの重要性を書かれておられます。現在, 好気性, 嫌気性の“2ボトル法”が標準となっているようで, 各種講習会でも2ボトル, 2〜3セットを勧めています。琉球大学では, 嫌気性ボトルの必要性に疑問を投げかけておられると感じています (臨床的に嫌気性菌を強く疑う場合は嫌気性ボトルを使用することはもちろんと思います)。

 実は当院は, オクソイド社のシグナルを使用しています。更新にあわせて2ボトル法に変更しようかと考えていたのですが, 琉球大学の論文などを読んで, このままシングルボトルで行ってもいいのかと愚考しています。コメントをお願いします。

【回答】
 琉球大学が投げかけているテーマは, “限られた医療資源”のなかで, どのような血液培養ボトルの選択が合理的か, 患者治療により多く貢献できるか (培養陰性結果には価値なし、資源の無駄) という点です。アメリカではこの種の議論が活発で, 実際に好気培養ボトル1種類に変更した施設もあります。

Some years back, recognizing that anaerobes had been eclipsed by fungi in cases of sepsis in several institutions, some have eliminated the anaerobic bottle in favor of a fungal bottle. I knew one institution that simply eliminated the anaerobic bottle as a routine to save money. In all cases, they had data on positive cultures (the more the better) justifying the change.

It is my understanding that the aerobic bottle is optimized for recovery based on its blood draw volume. I doubt replacing the anaerobic bottle with another aerobic (two aerobic bottles - doubling the inoculum) will improve recovery of facultative organisms. Rather than using the experience of others, if you are uncomfortable with going to one bottle despite your own data justifying it, use two aerobic bottles and keep stats. If, after a while, you find both bottles are always positive with the same organism, you could justifiably drop the second bottle. (American Society for Microbiology Division Cでの意見交換から引用)

これまでに明らかな事実は: 
・培養する血液量が多くなればなる程, 血液培養の陽性率は高くなる。
・偏性嫌気性菌の分離率はほとんどの施設で極端に低い (1%未満) (代わりに, 液体培地では分離が悪い真菌が問題になっている)。
・偏性嫌気性菌以外の菌種で, 嫌気培養ボトルでの陽性検出が有意に早いという事実はない。

これらのことから, 現在考えていることは, 以下のふたつの選択肢です:
(1) high-volume好気培養ボトルの使用 (培養する血液量は現在の2〜3本分, 20〜30 mlで, しかも好気培養ボトル1本で培養可能なボトル形体)

(2) 通常の好気培養ボトルを複数回採血して培養する (血液培養の採血のセット数を増やす)

(琉球大学・山根 誠久)

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