■ 血液培養ボトル穿刺時の注射針の太さ | |
【質問】
看護師をしております。血液培養の検体採取後, ボトルに移す際に18G (ゲージ) を用いたところ, 医師より“太すぎる”との指摘を受けました。このことは検査結果に影響するのでしょうか??? 教えてください。 【回答 (その1)】
質問に戻りますと, 注射針の太さ程度では結果に影響を与えるとは思えません。何故なら, 海外では翼状針採血が行われており, その際にはボトルへの血液注入を, 通常とは逆の, 好気, 嫌気の順にしています。これは翼状針のチューブ部分の空気が最初のボトルに入ってしまうためですが, これほどの量が入っても結果に影響を与えないのならば, 注射針の太さによる差くらいでは影響はないものと考えます。また, 採血セット (採血針, ホルダー, 翼状針など) の各社のカタログでは, 注射針の太さは概ね21〜23ゲージになっているようです。採血時の注射針の太さが小さければ, 溶血が起こると言われています。溶血は他の検査には影響を与えますが, 血液培養ではマイナス要因にはなりませんので, この件は考慮外でよいかと思います。 (日本ビオメリュー・横山 僚)
【回答 (その2)】
質問の文面にある「検体採取後, ボトルに移す際に18Gを用いたところ」について疑問があります。まず, 採血後に血液をボトルに接種する際, 注射針を18Gのものに付け替えているのか, もしくは採血時から18Gを使っているのか, という点です。検査用採血では概ね21G〜27Gの針を用い, 19G〜21Gは輸血用に使われていると思います。しかし, ゲージの使い分けに関する規則, 規定のようなものはなく, JCCLSの標準採血法ガイドライン (GP4-A1) でも採血には「21G〜23Gのものが一般的に用いられる」とだけ記載されており, 実際にも患者の血管の状態や採血部位, 採血量によって使い分けると思います。このような事柄と同様に, BACTEC血液培養ボトルへの血液接種に用いる注射針のゲージを限定したことはなく, CUMITECHに記載されているように, 皮膚消毒を十分に行い, 針刺し事故防止のため, 採血後には注射針を取り替えず, ボトルに血液を接種するという使い方をお願いしています。米国本社にも意見を求めましたが, 21G〜23Gを使うのが一般的との回答で, 確固たる基準はないようでした。 さて, 18Gの針を使うことでボトル内ガス組成に影響があるかどうかについてですが, 詳細なデータを持っておりませんので推測の範囲を出ませんが, 以下のように考えます。BACTEC血液培養ボトルのゴムキャップ (穿刺部位) は約3.5 mmの厚さを持っていますが, 18Gの注射針の開口部長径は約5 mmあります。従って, ゴムキャップを貫いた状態でボトル内と外気がつながった状態を作りだすことができるのですが, ゴムキャップに注射針を抜き差しする工程 (針の開口部が) ボトル内外をつなぐ (シャントする) 時間は瞬間的に起こるものであり, ボトル内のガス組成に大きな影響を与えるものではなく, 無視できるレベルであると考えます。また, 18Gの注射針は直径が1.2 mmありますので, 21G (0.8 mm), 23G (0.65 mm) と比べると切り口が大きくなりますが, ゴム自体の弾性, 粘度によって形状を復元し, 穴を塞ぎ, ボトル内の密閉性を保てると考えます。しかしながら, 微生物の増殖によるガス産生によって, ゴムの伸縮性を超えて圧力が高まることで, 培養液の漏出を起こすことがないとは言い切れませんので, 必要以上に太い注射針でゴムキャップに切り傷を作ることはお勧めできません。あまりに太い注射針の使用は, 患者に与える苦痛も大きくなりますので, 検査採血として適正なゲージの注射針を使うことを勧めます。 (日本ベクトン・ディッキンソン・小林 郁夫)
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