10/06/17
■ 血液培養用採血シリンジでの空気抜き
【質問】
 大学病院で勤務している看護師です。血液培養について質問させてください。

 血液を医師が採取する際にシリンジ内に空気が混入してしまうことがあります。嫌気性ボトルに分注する時は針先を真下に向けて混注すれば空気の混入は最小で済みますが, スタッフによってはシリンジ内の空気を抜く操作をしてからボトルに混注することもあるようです。しかしシリンジ内の空気を抜く操作をする際に, 採取した血液を更に空気に触れさせてしまうことや, 針先に血液を垂らすかもしれないとの理由でコンタミネーションの可能性が高まるという別意見もありました。大切なことは, 採取した検体を速やかにボトルに分注すること, 嫌気性ボトルには出来るだけ空気をいれないようにすることだと思うのですが, 方法としてはシリンジ内の空気を抜く抜かないの作業はどちらでも良いのでしょうか??? お忙しいところすみません。よろしくお願いします。

【回答】
 嫌気培養ボトルを非常に厳密に認識されているようですが, 実際的には酸素ガスや炭酸ガス濃度を測定する“血液ガス”分析用の採血ほどの厳密さは必要ないと思います。嫌気培養ボトルという名称が過大な印象を与えていると思います。空気に曝さないように嫌気培養ボトルに血液を注入しないと嫌気性菌が発育しない訳ではありません。通常, ヒト血液のなかの酸素濃度はどの程度ですか??? その血液のなかにいる細菌はほとんど酸素飽和状態で生存している細菌です。嫌気培養ボトルに, ことさら空気を注入する必要はないのですが, 空気抜きの作業に伴う血液による周辺の汚染が気になります。質問の文章にある「針先を真下に向けてボトルに注入する」ことで充分であり, 不必要な作業から血液を周りにまき散らすことの方が私には危険に感じられます。

 なお, (偏性) 嫌気性菌の分離率が近年, 極端に減少していることから, 盲目的に嫌気培養ボトルを使うのは無駄であるという議論があることも知ってください。

〔文献〕
玉寄美也子, 他: 血液培養における「嫌気培養ボトル」併用の有効性評価?菌検出率と迅速陽性判定の解析から?. 臨床病理 57: 1145〜1150, 2009.

(琉球大学・山根 誠久)


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