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【質問】
血液培養時に, 採血者のサイン・(採血の) 時間・部位を記載するとガイドラインにも書いてあります。何故,
それらが必要であるのか??? また, それを知ることで何ができるのか?? また,
(臨床へ) 還元できるのか??? 今後のサーベランスをするのであれば, 情報はそのことだけでよいのでしょうか???
【回答】
「CUMITECH 1C」 血液培養検査ガイドライン 22頁の”血液培養検査に際して患者のベッドサイドを離れる前にチェックすべき項目”をご覧になっての質問と思います。これらは検査の精度保証に関わる内容であると思います。質問の要点は,
1. 採血者のサイン, 2. 採血の時間, 3. 採血部位の3点と思いますのでそれぞれについて解説します。
1. 採血者のサイン
血液培養では採血部位の消毒が適切になされたか否かによって皮膚常在菌による汚染頻度が大きく異なります。皮膚消毒手技のトレーニングを受けた者と受けていない者で汚染頻度が異なることも報告されています。採血者別の集計を行うことで,
採血者個々の採血技術 (消毒手技を含む) を評価し, その結果をフィードバックして技術の向上,
ひいては血液培養検査の精度の向上につなげることが目的だと考えます。
2. 採血の時間
採血時間を記録することは“時差”を見るための指標となります。カテーテル感染を疑い,
カテーテルを抜去できない場合, カテーテル先端培養の代わりに, カテーテルを通過させて採取した血液と末梢静脈を穿刺して採取した血液について,
ペアで血液培養での検出時間を比較します。これにより, カテーテル通過採取した血液で2時間以上早く培養陽性となった場合,
カテーテル感染の診断の根拠となることが報告されています。
また, 血液培養では血液培養ボトルに血液を注入してからできるだけ遅滞なく血液培養装置にボトルを装填することが推奨されています。CUMITECHでは“できれば2時間以内に装填する”とも記載されています。血液培養装置では,
ボトルを装填すると自動的にボトルを培養して微生物の増殖を検知しますが, 装填の遅れは培養開始の遅れであり,
採血してから起炎菌が検出されるまでの時間を遅れさせることにつながります。
3. 採血の部位
CUMITECHには, 特定の採取部位に関する情報は追加情報としての価値を持たないという意味の記述があります。しかし,
カテーテルや鼠頸部から採血した血液培養ではコンタミネーションが多いと言われております。また,
精度保証という観点から採血部位を記録していくことは, より適切な結果が得られるようなモニタリングを行う一助となるものと考えます。
〔参考文献〕
Blot F, Nitenberg G, Chachaty B, Raynard B, Germann N, Antoun S, Laplanche
A, Brun-Buisson C, Tancrede C.: Diagnosis of catheter-related bacteremia;
a prospective comparison of the time to positivity of hub-blood versus
peripheral-blood cultures. Lancet 354: 1071〜1077, 1999.
Raad I, Hanna HA, Alakech B, IChatzinikolaou I, Johnson MM, Tarrand
J.: Differential time to positivity: a useful method for diagnosing catheter-related
bloodstream infections. Ann. Intern. Med. 140: 18〜25, 2004.
(日本ベクトン・ディッキンソン・小林 郁夫)
【質問者からのお礼】
丁寧な回答ありがとうございました。今後の血液培養について, 質問した3点を盛り込んでいけるようにしたいと思います。
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