09/04/07
■ 菌数の調整
【質問】
 お忙しい所申し訳ありません。質問になります。

 乳酸菌を使用して1 ml中または1 gram中に10,000,000個になるようにするにはどのようにすればよいでしょうか。菌の培養方法から調整方法までの詳細過程を教えてください。

【回答】
 具体的な調整手順を教わる前に, 自分が菌数を調整しようとする目的を明確にすることが, まず必要です。使う目的によって, 調整手順が違うからです。例えば, 生きた (分裂増殖できる) 細菌細胞のみで調整するのか, 死んだ細菌細胞も含んで調整するのかで方法が違ってきます。また, どの程度の正確さが求められるのか (1,000個と100個を区別できる程度の方法なのか, 100個と200個を区別できる方法なのか) でも使う方法は違ってきます。

 通常用いる方法は, 生きた, 分裂増殖できる細菌細胞のみを定量する方法で, 調整した菌浮遊液の10倍希釈系列を用意し, その一定量を寒天培地に接種して培養し, 発育してきた菌集落 (コロニー) の数を数えて, 希釈率と接種液量から原液に含まれていた細菌細胞数を算出します (colony forming units: CFUの定量)。この方法だと, 10倍希釈法を使うので, 1,000個と5,000個を正確には区別できません。

 多くの場合, 菌接種の後 (接種量はあまり影響しません), 液体培地で充分な時間培養すると, 達する最大菌濃度がほぼ一定しますので, その濃度を予めCFUの定量で測定しておき, 以後同じ条件で培養した培養液もこの濃度にあると仮定して, 適宜希釈して用います。

 また, 寒天培地の菌集落から菌浮遊液を調整する場合には, 予め濁度とCFUの相関から回帰式を定めておき, 未知の菌浮遊液の濁度を測定して, その回帰式からCFUを算出します。濁度は赤色, 吸光波長600〜650 nmを用います。

 凡その菌濃度でよければ, McFarland単位が用いられます。これも濁度を目視(専用の濁度計もある) で判定する方法ですが, McFarland no. 0.5濁度の菌浮遊液は1〜2×10^8 CFU/mlの細菌を含むとされています。しかし, この関係もEscherichia coli ATCC 25922で定められたものであり, 厳密に言うとそれ以外の菌種, 菌株にも適用できるかと言われれば確信はありません。McFarland単位を使う場合には, その程度の正確さで充分という使用目的があるからです。

 菌濃度の調整方法には, 乾燥重量や湿潤重量を測定する方法, 窒素量, DNA量, RNA量, タンパク量を測定する方法など, いろいろな方法があります。使用目的によって, 求められる正確さが違うので, 予めの吟味が必要なのです。

(琉球大学・山根 誠久)


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