|
【質問】
はじめまして。私は管理栄養士専攻の大学に通う2年生です。
食品衛生学実験で, 某コンビニで販売されているサラダを検体として細菌検査を行いました。大腸菌群の検査で,
BGLB培地→EMB培地→LB培地→IMvic試験と行った結果, Kluyvera ascorbataとKluyvera
cryocrescensという菌だと同定されました。私の勉強不足で申し訳ないのですが,
この菌はサラダを製造する過程で混入してしまう可能性の高い菌なのでしょうか???
またこの菌 (がどのような細菌なのか) についても教えて頂けるとうれしいです。
【回答】
Kluyveraは, 土壌や下水などからよく分離される細菌です。サラダに使う野菜からも検出される可能性は充分にあります。サラダを製造する過程というよりも,
野菜そのものに付着していたものと考えられます。Kluyveraという菌名は波乱万丈の歴史があります。最初に日本の微生物学者(Asaiら,
1956年)がKluyveraとう菌名を用いました。これは, オランダの微生物学者のAlbert
Jan Kluyver (1888-1956: 微生物の性状や分類に多大なる貢献をした) の記述した細菌に近かったためです。しかし,
Asaiらは1962年の論文で, Kluyveraは腸内細菌科のEscherichia属に入れるべきだとし,
Kluyveraという名前をその後使いませんでした。1980年の“Approved lists
of bacterial names”にはKluyveraは記述されていませんでした。1981年の論文で,
生化学性状とDNA hybridizationによる相同性との違いから, 新しく (再定義)
菌名としてK. ascorbataとK. cryocrescensが提唱されました。最後に,
IMViC試験だけでは菌名まで同定できません。また, 質問者が特定の菌 (K.
ascorbataとK. cryocrescens) について調べたいという意思があるのなら,
インターネットで文献などを容易に調べることができます。
〔参考文献〕
1. Asai, T, H Iizuka, K Komagata.: The flagellation of genus Kluyvera.
J Gen Appl Microbiol (Japan) 8: 187〜191, 1962.
2. Farmer, J, J III, et al.: Kluyvera, a new (redefined) genus
in the family Enterobacteriaceae: identification of Kluyvera
ascorbata sp. Nov. and Kluyvera cryocrescens sp. nov. in clinical
specimens. J. Clin. Microbiol. 13: 919〜933, 1981.
【質問者からのお礼】
迅速かつ丁寧なご回答, 誠にありがとうございます。大変参考になりました・・・この菌はやはり有害なんでしょうかね???
自分でもまたネットや文献などで調べてみたいと思います。あ, IMvic試験だけでは菌名までは同定できないんですか!!??
ありがとうございます。もう一度見直してみます。また分からないことがありました時には,
宜しくお願い致します。ありがとうございました。
|戻る|
|