07/02/10
07/02/19 07/02/21
■ 混濁のない増菌培地
【回答】
 検査センターで細菌の検査をしているものです。増菌培地についてお伺いします。現在の検査工程で, 増菌培地を目視により検査を進めていっているのですが, 混濁していない増菌培地も, 混濁している増菌培地と同じように検査したほうがよいのでしょうか。教えてください。

【回答】
 増菌培地は, 増菌したい菌種または増菌が必要な材料など, 目的によって多種多様な培地があります。増菌培地と称される多くの培地は, 混濁の有無によって増殖を判断します。従って増菌培地に混濁を認めない場合には, 使用した増菌培地に発育可能な菌種は増菌しなかった, または存在しなかったことになりますので, 混濁のある増菌培地と同様に検査することはないと思います。

 混濁した増菌培地で注意することは, 多種類の菌種が混在する材料を増菌培地に接種した場合です。この場合には, 使用した増菌培地に発育可能な菌種がすべて一様に発育増殖するとは限りません。個々の菌種, 菌株の増殖力の差, 混在する菌の抑制物質産生などの影響が培地内で起こるためです。また逆の現象, 本来増菌できない培地にその他の菌種と混在することで増殖できる場合もあります。ブドウ球菌や血液成分とHaemophilus の関係, 乳糖分解陽性の大腸菌と乳酸菌の組み合わせなどでおこります。

(琉球大学・仲宗根 勇)

【読者からの意見】
 いつも興味深い内容に関心ばかりさせられております。さて, 混濁のない増菌培地についてですが, 私の経験では, “Tween 80の入った豚丹毒菌の増菌培地等”の例では, 増菌されていても, 肉眼では濁りが分からず, わずかな沈殿が見られる程度で, 平板に塗抹培養しなくては判定できなかったように思います。そういう意味では, 目的とする細菌や増菌培地の特性により, 濁りを指標とすることの適否は一概には言えないのではないでしょうか???

【回答への追加】
 かつて, 全自動血液培養システムを評価した時の経験です。“偽陰性”の頻度を評価する目的で, 培養陰性となった3,000本の血液培養ボトルからGAM半流動培地に盲継代培養しました (もちろん, その時点では血液培養ボトルの液体培地には肉眼的に認められる混濁はありません)。この3,000本の内, 6件から細菌が回収されました。“偽陰性率が0.2%”ということで, 許容されると判断し, 以後は盲継代培養する必要なしと判断しました。いずれにしろ, 濁りあるいは生化学反応 (炭酸ガスの検出) での判定でも, 偽陰性は皆無ではないと考えます。

〔参考文献〕
宮川静代, 山根誠久, 戸坂雅一: 全自動血液培養システム, BacT/Alertでの成績解析?1年間の使用経験から?. 日本臨床検査自動化学会会誌 19: 130〜136, 1994.

(琉球大学・山根 誠久)

【読者からの意見】
 いつも「質問箱」を参考にさせて頂いております。「混濁のない増菌培地」を質問された方が, 何を対象に細菌検査をされているのか分かりませんが, 食品を対象とする場合には以下のような回答を頂いたことがあります。

「食品として検査されるのであれば, 型どおりに, 濁っても濁らなくても選択培養は必要です。その様な決まりにいたしております。自社基準で確かめるだけであれば, どうやっても自由ですが, 食品衛生法あるいは食品に関しての通知を基準にしたという場合は, 濁ろうが濁るまいが, 選択培養はやっていただくことになります。濁らない場合は・・などと考える余地はありません。(国立衛研)」

 質問者の対象が食品ならば参考になるかと思い, 大変失礼ではありますが, 横から意見させてもらいました。


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