08/07/17, 21
■ 湖底の泥からの放線菌分離
【質問】
 ダム湖の底泥中に放線菌Streptomycesがどの程度存在しているか調べることになりました。文献やインターネットより, Streptomycesの培養にはアルブミン培地が好適であると知り, 培地作りの準備を行っておりますが, 培養についての知識が乏しいうえに文献をみつけきれず, 以下の点で悩んでおります。

(1) 培地にエッグアルブミンを用いますが, オートクレーブ滅菌をするとアルブミンが変性しないか (アルブミン培地の調製方法)。
(2) 対象試料がダム湖底泥の軟泥ですが, そのまま塗抹または混釈してよいのか。

 培地組成には以下を用意しています。
エッグアルブミン, グルコース, K2PO4, MgSO4・7H2O, Fe2(SO4)3, 寒天, 蒸留水
 どうぞご教授お願いいたします。

【回答】
1. アルブミン培地の調製方法:
 エッグアルブミン 0.25 g
 グルコース 1.0 g
 K2HPO4 0.5 g
 MgSO4・7H2O 0.2g
 Fe2(SO4)3 1%溶液 1 ml
 寒天 15 g
 蒸留水 1000 ml
 pH 6.8〜7.0

 エッグアルブミンは0.1N NaOH数ml (フェノールフタレンを1滴加えておく) で溶解する。溶解した溶液の色が微紅色です。

 上記の組成を混合した後, 121℃・15分間オートクレーブにて滅菌します。

 エッグアルブミン寒天培地は, 広く一般に放線菌の分離に使われています。特に選択性はありませんが, 土壌中で圧倒的に多いStreptomycesが良く生育すると言われています。

2. 試料の接種
 通常は希釈平板法で放線菌を分離, 計数します。すなわち, ダム湖の底泥を原液とし, 段階的に希釈して, 各希釈液の一定量 (100μl) を寒天培地の表面にコーンラージ棒で全体に塗抹します。しかし, 試料によっては放線菌に比べ他の微生物, 例えば細菌が遥かに多いことがあります。そういう場合は, 検体試料の調製や培地の選定など, いろいろな工夫が必要となります。ここで簡単には説明できませんので, 下記の参考書を紹介します。

 また, 放線菌を分離, 計数する際に, 以下の点を勧めます。
・試料は泥ですので, 粘性, あるいは塊があるかもしれません。希釈する前には検体を超音波で10_20分ほど処理してから希釈したほうがよいです。

・使用する寒天培地の表面が湿っていると他の細菌が生育しやすいため, 十分乾燥してから使った方がよいと思います。

・寒天培地上での菌類の生育, 拡散を阻止するため, 抗カビ剤を培地に添加したほうがよいです (cycloheximide 50 mg/l)。

・培養後, 放線菌が存在している場合, たくさんの他の細菌と一緒に生えてくると予測されます。判別しやすい希釈段階のプレートを選び, 表面菌糸を形成するなど, 放線菌の特徴を持つコロニーを計数, 分離します。

〔参考文献〕
(1) 土壌微生物研究会編: 新編 土壌微生物学実験, 養賢堂, 1992.
(2) 微生物の分離法, R&Dプランニング, 1986.

(テクノスルガ・ラボ・立里 臨)


【質問者からのお礼】
 お忙しい中, お返事ありがとうございます。早速作成を試みます。本当にありがとうございました。


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