■ 酵母の栄養源について | |
【質問】
初めて質問いたします。よろしくお願いいたします。 学校の清酒の醸造に関する授業で疑問に思いました。酵母が利用できるのは, 単糖類と二糖類の一部で, そのためにそこまではコウジカビによる糖化過程が必要であると教科書には書いてありました。しかし, 具体的には何が利用できて, 何が利用できないのかよくわかりません。“グルコース, フルクトース, ガラクトース, スクロース, マルトース以外に”酵母が利用できる糖はあるのでしょうか。 【回答】
まず, 冒頭に記しましたが,「酵母」は単一種を示している訳ではありません。「酵母」と言っても人の感染症とかかわり合いのある「属」だけでも10属以上あります。そして, その各属にはたくさんの種があります。でも, 質問から「清酒の醸造」に関わる「コウジカビ」,「酵母」と言うことですので, ここでは「コウジカビ」を Aspergillus oryzae, そして「酵母」を Saccharomyces cerevisiae に特定して答えます。 ご指摘のように, まずはお米のデンプンが Aspergillus oryzae が産生する各種酵素 (αアミラーゼ・グルコアミラーゼ・βグルコシダーゼ・セルラーゼ・キシナラーゼ等々)によって糖化されます。そして, それをSaccharomyces cerevisiae が利用してアルコールを作るのです。要するに, Saccharomyces cerevisiae は糖化物をエネルギー源として利用できるのですが, 鎖状のデンプンのままでは利用できないのです。Saccharomyces cerevisiae にとって大き過ぎる食べ物を, Aspergillus oryzae が食べ易いように小さく切ってあげているのです。そして, Saccharomyces cerevisiae はその糖化物を食べてアルコールへと分解していくのです。 そこで, 質問の Saccharomyces cerevisiae が利用可能な糖ですが,“グルコース・フルクトース・ガラクトース等の単糖類や, スクロース・マルトース等の二糖類以外にもあります。具体的には, 二糖類のトレハロースと三糖類のラフィノースを利用できることが知られています。単糖類と二糖類の一部だけでなく, 三糖類のラフィノースも利用できるのです。 以上,「酵母」を「Saccharomyces cerevisiae」に置き換えて答えました。 (信州大学・川上 由行)
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