■ L-システイン塩酸塩とL-システイン | |
【質問】
初めてメールさせていただきます。3点質問があり, 教えていただければ幸いに存じます。 (1) レジオネラ菌の培地にシステインを添加する際, オートクレイブ後に加えているようなのですが, システインは熱に弱いのでしょうか。 (2) また, レジオネラ菌のBCYE培地では, 培地組成にL-システイン塩酸塩が指定されていますが・・・ (2)-1 L-システイン塩酸塩1水和物とL-システインでは, レジオネラ菌 (あるいはその他のシステイン要求性の細菌) の増殖に差が生じるのでしょうか。 (2)-2 以下に示しましたKDM-2培地中のL-システイン塩酸塩をL-システインで代用して培地を作成したところ, 7〜10日ほどでL-シスチンと思われる六角形の結晶構造物が寒天培地中に多量に析出してきました。L-システインは酸化されやすいようなのですが, それが原因なのでしょうか。レジオネラ菌の培地でもL-システイン塩酸塩を使用するのは, 同じような理由なのでしょうか??? それとも他に何か理由があるのでしょうか。 現在, 魚類病原細菌であるRenibacterium salmoninarumという細菌を培養しているのですが, システイン要求性があり, 培地にシステインを添加します。マニュアルには, システイン添加後にオートクレイブするとかかれています。ただ, R. salmoninarumは増殖速度が24時間程度と非常に遅く, さらにあまり培養が安定しません。今回, レジオネラ菌のシステインに関する記載を拝見しまして, R. salmoninarumの増殖と関係があるのではないかと思いました。なお, 参考までにR. salmoninarum培養用の培地を以下に示します。 〔KDM-2培地(培地 100ml)〕
以上, どうかよろしくお願いいたします。 【回答】
最初の質問ですが, 性質上, L-システインおよびびL-システイン塩酸塩を培地に加え滅菌しますと酸化され, L-シスチンに変化してしまうため, 基本的には基礎培地を滅菌後, 平板培地を調整する前にL-システイン溶液を濾過滅菌して添加します。 L-システインとL-システイン塩酸塩の差については, 微生物の利用に関しては差がないと思われます。ただ上述したように, 両者は溶解性が異なるため, L-システインは一度, 酸性溶液として溶解させてから加えるなど, 工夫が必要です。 L-システインを普通に培地に添加し, 滅菌して調製すると, 培地が冷えた時に溶解性が低下して析出する, あるいは滅菌により溶解性が低いL-シスチンに変化して析出するということが考えられます。 (日水製薬・三品 正俊)
システインを加熱滅菌後に培地に添加するとのことでしたが, “培地のpH調整”はどのように行うのが望ましいのでしょうか。使用する培地のpHは6.6です。システイン以外のものを溶解した培地はpHが6.6付近で, システインを加えることでpH 4.0になってしまいます。L-システイン塩酸塩溶解液をNaOHで調整してpH 6.6としたものを滅菌後に加え, 培地を作製しても問題ないのでしょうか。それとも緩衝液を用いてpHを調整した方が良いのでしょうか。また, よく使用される緩衝液があれば教えていただけないでしょうか。 【回答】
緩衝剤としては, レジオネラ用培地に使用されている「ACES」というグッド緩衝剤 (Good's buffer: グットバッファー) が使用できます。グッド緩衝剤は細胞培養, 組織培養など, 生物分野で広く使用されている緩衝剤で, 無機塩系 (リン酸緩衝剤など) の緩衝剤と比べてカチオンなどによる不溶物生成がありません。グッド緩衝剤には, 緩衝pH域の異なるものが揃えられていますので, 希望するpHから選択できます。 (日水製薬・三品 正俊) 【質問者からのお礼】
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