■ LB培地の作成にあたって | |
【質問】
いつも参考にさせていただいております。私は薬学部3回生のものです。質問をよろしくお願いします。 今回, 学生実習でLB培地の調製をしました。そこでオートクレーブ滅菌を行う際, “軽く”蓋を閉めたのですが, これは圧がかかるので空気を逃がすためなのでしょうか??? もし, きちんと閉めていた場合はどうなるのでしょうか??? また, 滅菌終了後, 培地の温度が室温まで下がってから蓋を“きちんと”閉めたのですが, もし温度が下がる前に蓋を閉めた場合はどうなるのでしょうか??? 蓋に水蒸気がたまって培地に悪い影響を与えると思うのですが, どのような影響なのか教えて下さい。初歩的な質問ですがよろしくお願い致します。 【回答】
(1) オートクレーブ滅菌を行う際, “軽く”蓋を閉めたのだが, もしきちんと閉めていた場合はどうなるのか??? (2) 滅菌終了後, 培地の温度が室温まで下がってから蓋を“きちんと”閉めたのだが, もし温度が下がる前に蓋を閉めた場合はどうなるのか??? まず, (1) について回答します。オートクレーブは, 水蒸気で高温環境 (通常は121℃) を作り出して, その高温で15〜20分間作用させて滅菌します。ご存知のように水の沸点は100℃ (1気圧) です。121℃という高温環境を作り出すには, 高圧下でなければならず, 2気圧という高圧環境が必要なのです。ですから“高圧蒸気滅菌”と言うのです。もし, LB培地が完全な密栓状態だったら, 培地内に閉じ込められている「空気」も「培地」も高温環境で膨張し, 栓 (蓋) を含めて, 培地容器自体が破損する可能性が容易に考えられます。 次いで, (2) についてですが, 通常はオートクレーブが滅菌終了を知らせ, 圧が完全に下がってから取り出すことになっています。ですから, 少なくとも温度は100℃以下です。もちろん, さらに「室温付近」まで下がってから取り出して蓋をすればまったく問題ありませんが, 取り出した直後でも既に100℃以下になっている筈です。以下の説明は, (1) の回答を参照して考えられると思います。高温状態の「熱い」うちに密栓した場合を考えてみると, 培地以外の空間は水蒸気で満たされています。温度が下がれば水蒸気は水になります。つまり圧は下がります。もし, 満たされていた空間が大きければ大きい程「より強い陰圧状態」が作り出され, 高温状態で閉めた蓋は容易に開けることができなくなります。場合によっては蓋が破損する可能性も考えられます。ですが, オートクレーブから取り出す時点で, 既に100℃以下になっている筈ですし, 作成LB培地内の空間体積が「異常に」大きいことは通常では考えられませんので, 結果として, 閉めた蓋が多少は開けにくくなるかも知れませんが, 開けられない状態になることはまずないと思います。 (信州大学・川上 由行)
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