07/06/27
07/06/28
■ LB培地でのガス発生の判定
【質問】
 初めて貴学会の質問コーナーへ投稿いたします。私は, 県の保健所で食品の検査に従事して2年にもなるのですが, 週1回10〜20位の検体数でほとんどの検査項目が「陰性」なので, これでよいのか不安な毎日なので, 日頃から臨床微生物迅速診断研究会の質問コーナーを参考とさせていただいております。

 今回, ご質問させて頂くのは“LB培地でのガス発生の判定”です。職場の先輩から, 「よく解らない時は, 試験管を軽く叩いて上がってくる小さな気泡を観る」と言われましたが, 私は試験管を叩くことで, 試料を加えた時に混入した空気が上がってきて誤判定になると思います。ダーラム管の中に溜まったガスを判定するとなっているので, 光などにかざして確認するべきだと思いますが如何でしょうか??? ご教授よろしくお願いいたします。

【回答】
「よく解らない時は, 試験管を軽く叩いて上がってくる小さな気泡を観る」に同意します。恐らく, 質問者はこの現象を見たことがないので,「試料を加えた時に混入した空気が上がってきて誤判定」と思い込まれているのでしょう。先輩の言われたこの現象は, 炭酸飲料やシャンパンの気泡 (気泡の大きさはもっと小さいですが) の様に次から次へと出てくるイメージです。菌の活性が弱い時や乳糖分解が弱い菌で観察されます。回答者は, ダーラム管中の気泡を確認しようとしても, ダーラム管自体が検体の影響や微生物の増殖で確認できなかった経験があります。また, 光などにかざして確認しようとしてダーラム管の先端 (ガスが溜まるところ) を試験管の管壁に近づけようとしても, なかなか思うようにゆかないこともあります。

(日水製薬・小高 秀正)
【追加質問】
 早速のご回答ありがとうございました。

 ダーラム管自体が検体の影響や微生物の増殖で確認できない時は, 仰られるような方法がとても参考となると思います。しかしながら, 培地の混濁も無く, ダーラム管がはっきりと確認できる場合も, 菌の活性が弱い時や乳糖分解が弱い菌を考え, 同じように実施すべきですか???

 炭酸飲料やシャンパンの気泡 (気泡の大きさはもっと小さいですが) の様に, 次から次へと出てくるのは誰が観てもある程度確認できると思います。(問題は)「小さいのが少し上がってきた」と言われて再度観ても二度と確認することが出来ない時も, EMB培地への接種を試みたほうがよいのでしょうか???

 疑問は確実に解決する方向でやってみます。貴重なお時間の中での回答, 本当にありがとうございました。これからもご教授をお願いすることもあるかと思いますが, よろしくお願いいたします。

【追加回答】
「小さいのが少し上がってきた」と言われて, 再度観ても二度と確認することが出来ない時もEMB培地への接種を試みてください。大腸菌群の存在が疑わしい時には , そこで悩むのではなく, 次のステップを行うことです。EMB培地で確認し, コロニーの増殖を確認したら2つ以上のコロニー (なるべくコロニー形態の異なる複数のコロニー) を釣菌し, 非選択培地で純培養した後, グラム染色, 乳糖ブイヨンへの再接種, IMVIC試験などを実施し, 総合的に大腸菌群の判定をしてください。許される限り, 自己の判断 (推定) とその確認 (同定) を繰り返して経験を重ねることをお勧めします。ちなみに, 回答者は32年間微生物検査に携わっていますが, まだまだ経験や知識が足りないと感じています。

(日水製薬・小高 秀正)

【質問者からのお礼】
 再度のご丁寧な追加回答ありがとうございました。勝手な判断で検査を終了することなく, きちんと確認を行い, 確実な検査結果を出して行くようにしたいと思います。毎回の貴重な経験を無駄にしないようがんばります。ありがとうございました。


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