09/02/12
■“多剤耐性緑膿菌 (MDRP)”患者の使用した浴槽やシャワー
【質問】

 はじめまして。●●県の救急センター看護師の■■と申します。いつも参考にさせていただき, ありがとうございます。今回は一つ質問があってメールをさせていただきました。

 当センターでは熱傷患者の治療を行っていますが, 入院期間が長くなる患者の創から“多剤耐性緑膿菌 (MDRP)”が検出されることが認められるようになってしまいました。MDRPの検出される患者が入浴やシャワーを実施した場合, 浴槽やシャワーに使用した器械の消毒はどのようにするのが最善なのでしょうか??? 現在は, 浴槽 (ステンレス) は0.1%次亜塩素酸ナトリウム液に浸漬して1時間したら水を抜き, 乾燥を図るようにしています。また, シャワーの場合はシャワートロリを洗浄した後, 水滴をふき取り, アルコール噴霧を実施しています。もちろん, 本人だけが使用するように配慮はしています。

 他の患者に感染させないためにも, ぜひご指導をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【回答】
 基本的には有機物を物理的に洗浄して洗い流すことが重要です。軟膏や落屑などの有機物を洗い流した後, 界面活性剤 (陰イオン界面活性剤または両性界面活性剤) での洗浄を行います。両性界面活性剤であるテゴーの原液で洗浄した後, 5分間放置した後に洗い流すという方法もあります。しかし, テゴーには粘膜刺激性がありますので, マスクを装着しての使用が良いでしょう。また, お風呂などの石鹸を使用する場所では, 逆性石鹸は効果がないので注意ください。次亜塩素酸ナトリウムの使用については, 浴室や浴槽には金属が付着している部分もあるため, 錆の問題があります。錆が発生すると, 剥離した部分に有機物や微生物が付着して除去が困難になると思います。また浸漬できない部位についての対応も困難だと思います。アルコール噴霧は, 浴室などの水が多い場所では適正濃度が保てるか疑問です。アルコールを使用したいのであれば, “洗剤で良く洗った後”, “しっかり水気を拭いて”を条件に, アルコール「清拭」ではいかがでしょうか。アルコールなどの消毒剤の噴霧は, 使用者が曝露する危険があり, 避けたほうが良いでしょう。この“多剤耐性緑膿菌 (MDRP)”は乾燥に弱いので, 良く洗浄した後, 十分に乾燥させることも重要です。

 なお, 回答者の施設ではMDRP検出の有無に拘わらず, 熱傷患者へはディスポ・シーツを敷いて行い, 終了後にマットの洗浄を行い, 高温のお湯で流します。患者専用にする必要はなく, MRSAへの対応時と同様に, 当該患者を最後に入浴させるようにしてはいかがでしょうか。

(愛媛大学・中野 夏代)

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