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【質問】
いつも参考にしています。私は今年, 臨床検査技師の学校を卒業し, 細菌検査を担当しています。早速質問なのですが・・・
私が通っていた学校では, DHL, SS, TCBSなどの滅菌がいらないと書いてある培地でも,
調整した当日に使わずに保存し, 翌日以降に使う場合には滅菌するように習いました。そのため学校の実習では,
調製した日に使うことがないので, いつも滅菌をかけていました。しかし実際,
卒業してから仕事をしてみると, 保存する場合でも滅菌はしていません。それで疑問に思ったのですが,
私が学校で習ったことは間違っているのでしょうか。
【回答】
学校で習った培地の調製法は, 保存中の雑菌発育を防ぐという点では間違いではありません。胆汁酸塩が添加されている培地は,
加温溶解のみの培地と高圧蒸気滅菌できる培地とに使用法が指定されています。DHL寒天培地やマッコンキー寒天培地,
デスオキシコレート培地は, やむをえず平板を保存する場合に高圧蒸気滅菌を行うように記載しています。一方,
TCBS寒天培地やSS寒天培地, SS-SB寒天培地は, 加温溶解に限定され, 高圧蒸気滅菌しないように明記されています。その高圧蒸気滅菌をしてはいけない理由ですが,
榎本省二ら (モダンメディア 第10巻, 第6号) はSS寒天培地の例で, 溶解時間延長による過度の加温や高圧滅菌により,
検出目的菌であるS. flexineriやS. dysenteriaeの発育が抑制され,
全体に抑制が強くなると報告しています。上記報告より, 過度の加温溶解を避ければ,
抑制が強くなることはないので, 加温溶解で調製された平板であっても保存期間中に雑菌発育がなく,
平板の色調の変化がなければ一般的に翌日以降でも使用できると考えます。ただ,
所定の培地性能が発揮され, 精度よく目的菌を検出するためには, メーカーの指定した使用法を奨めます。
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