07/07/18
07/07/19
■ メタロ-β-ラクタマーゼ産生菌とAZT (aztreonam)
【質問】
 はじめまして。細菌検査担当の検査技師です。いつも「質問箱」で勉強させていただいております。

 初歩的な質問かもしれませんが, 「メタロ-β-ラクタマーゼ産生試験陽性の場合, β-ラクタム系薬 (ペニシリン系, セファム系, カルバペネム系) は耐性であり, “感性”と判定された薬剤があっても, “無効である”と臨床に報告する」ということは, さまざまな文献, 勉強会などにて言われていることですが, モノバクタム系薬のAZTには“比較的感性”であるとされています。

(1) なぜ, 同じβ-ラクタム環をもつ抗菌薬であるのに, AZTは感性となるのか??? 

(2) また, メタロ-β-ラクタマーゼ産生試験陽性の場合は, ペニシリン系, セファム系, カルバペネム系と同様に, AZTの感受性結果が (感性: S) と判定されても, 無効である (耐性: R) と臨床側に報告したほうがよいのでしょうか。

わからず悩んでおります。よろしくお願いいたします。

【回答】
 モノバクタムの特徴: β-ラクタム系薬剤の中でも2つの環をもつペニシリンやセファロスポリンと異なり, β-ラクタム環を1つしか持たないという構造をもち, β-ラクタマーゼに比較的安定な構造なのですが, Bush group 1 セファロスポリナーゼ (AmpC) やESBLでは容易に加水分解されてしまいます。

 では上記を踏まえつつ, (1) の質問についてですが, これはメタロβ-ラクタマーゼの基質特異性によるものと考えられます。ご存知のようにβ-ラクタマーゼとβ-ラクタム環抗菌薬との反応は酵素反応です。ペニシリナーゼの基質がペニシリンであるように, 酵素には特定の基質が存在します。同様にメタロβ-ラクタマーゼはカルバペネムを含むβ-ラクタム系薬剤を基質としますが, 前述したようにモノバクタムは特徴的な構造をもつため, メタロβ-ラクタマーゼでは分解されにくいと考えられます。

(2) の質問の回答は(1)の回答内に含まれていると思いますが, メタロβ-ラクタマーゼ産生試験陽性の場合であっても, モノバクタムの薬剤感受性試験結果については感性(S)を耐性(R)と判定せず, 薬剤感受性試験結果そのままの結果を報告します。もちろんメタロβ-ラクタマーゼ産生だけでなくAmpC やESBLも保持している場合がありますので, メタロβ-ラクタマーゼ産生試験陽性でもモノバクタム耐性(R) になる場合はあります。  

(信州大学・松本 竹久)


【質問者からのお礼】
 お忙しい中, 貴重なご回答をいただき, ありがとうございます。 大変勉強になりました。日常の検査に活用していきたいと思います。また, 日々の研鑽を怠らず, より良い検査になるように努力していきたいと思いますので, 今後ともよろしくおねがいいたします。


戻る