08/07/27
■ マイクロバンクの使用
【質問】
●品質管理の■■です。今回, 菌の復元 (保管) 方法についてお尋ねします。
今現在, 大腸菌・黄色ブドウ球菌などの乾燥菌を半年に一度復元を行っていますが, 乾燥菌を斜面培地に植菌し, 冷蔵庫保存で半年。その菌を1月毎に植菌して常温保存 (使用期限1ヶ月) しています。特定微生物試験で使用しているサルモネラと緑膿菌は“マイクロバンク”を使用し, 冷凍保存を行っています。そこで, “マイクロバンクを使用できる菌の種類”に制限とかあるのでしょうか??? どの菌でも使えるのであれば, 保存期間のことと使用の容易さを考えるとマイクロバンクで保存したいのですが。ご意見お願いします。

【回答】
 マイクロバンクで使用できる菌種について制限はあるのかと質問ですが, 特別な制限はありません。特に質問の中で乾燥菌とありますが, これはゼラチンディスク法あるいは凍結乾燥法による保存法を指していると思われますが, 当然ながらこれらの方法で保存できる菌群で使うことに何ら問題はないと考えられます。むしろ保存温度で回収性に違いが出ることが考えられます。

 添付しました文献 (reference.pdf) は, 取扱いが困難で死滅しやすい9菌属, 43菌株について, 多くの菌株で1年半以上の長期保存が可能であったとの結果が得られたものと, もうひとつは比較的早期に死滅しやすい菌および取り扱いの面倒な菌で, 臨床検査室などで精度管理菌株として汎用されるような菌を対象とした23菌種, 64菌株について, 普通に使用される冷蔵庫のフリーザー(−10℃〜−20℃前後)から1週間ごとに回収を試みたデータです。このような温度下でも2ヶ月以上, 大部分は3ヶ月以上生存しえることが報告されています。また, 通常の臨床分離株の短期保存にも十分使用できることが確認されています。長期的には, 急速に冷凍しマイナス40℃以下, さらにはドライアイス以下の温度であれば半永久的とも言えますし, これを元株にして置く一方, 培地に換えて取り出しやすい温度下での保存も可能です。

 マイクロバンクはすべての菌株において万能という訳ではありませんが, 保存データ, 操作の簡便性, 随時取り出し可能, 5色バイアルによる使い分けなど, 総合的に評価されれば利用価値は高いものと考えられます。

(イワキ株式会社・石黒 雅彦)

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