■ MRSAの病原性 | |
【質問】
感染対策に初めて携わる看護師です。書籍などを読んでもなかなか納得できないので質問させて頂きます。 MRSAの病原性とは一体なんなのでしょうか??? 抵抗力の下がった宿主の体の感染, そして増殖するとさまざまな疾患を引き起こすとありますが, 増殖することを病原性というのですか??? MRSA感染で死亡した例などは, どういう機序で死亡に至るのでしょうか??? 果たして本当に細菌が悪いのでしょうか??? なにぶん初心者ですので, よろしくご教示下さい。 【回答】
MRSAとは, 何度も書きましたが, methicillin (メチシリン) という抗菌薬に耐性の黄色ブドウ球菌を指します。ということは, メチシリンという抗菌薬を使っても有効でない, 感染症が治療できないということになります。メチシリン以外にも数多くの抗菌薬に耐性を示すことが多いため, 感染した場合, その治療が困難になる (使える抗菌薬が限定される) ということも意味しています。病原性については, MRSAでない黄色ブドウ球菌, すなわちメチシリンが有効な黄色ブドウ球菌 (MSSA) となんら差異はないと理解してよいと思います。黄色ブドウ球菌の病原性は, メチシリンが有効か否かではなく, 黄色ブドウ球菌のもつ様々な毒素や酵素の産生能力, 定着因子や莢膜などの存在が重要となります。例えば, MRSA感染症として消化管手術の後の激しい下痢症も黄色ブドウ球菌の産生するリパーゼという酵素が原因であり, 細菌性食中毒として腸炎ビブリオに次ぐ黄色ブドウ球菌毒素による食中毒でもMRSAが分離されることもあります。普通の黄色ブドウ球菌 (MSSA) とMRSAの大きな違いは, 感染した後, 治療する段階で差があると言えます。 (琉球大学・山根 誠久)
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