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【質問】
“ムコイド型緑膿菌”の判定基準 (定義) について教えてください。また,
ムコイド型かどうかとbiofilm (バイオフィルム) 産生量とは関連性はありますか???
【回答】
(1)“ムコイド型緑膿菌”の判定基準 (定義) について教えてください。
“ムコイド型緑膿菌の判定基準 (定義) ” についての統一された明確な記述は特になく,
経験的に集落の外観等で決めているのが現状ではないでしょうか。細菌の集落は通常,
その外観からスムース型, ラフ型, ムコイド型の3型に大別され, なかには境界線がはっきりしない中間型のものも存在すると考えられますが,
便宜上3型のいずれかに当てはめているものと思います。つまり肉眼や拡大鏡で見た外観や白金耳等で触れたときの集落の粘稠度
(粘り気の強さ) などを参考にしてムコイド型か否かを判断しているものと考えられます。また分離当初はムコイド型菌であっても,
継代培養を繰り返すことによってスムース型に変化するものもあります。集落の性状は菌株の状態や使用培地,
培養条件によっても微妙に変化する可能性があり, “ムコイド型の定義”は曖昧なような気がします。ただ緑膿菌の“ムコイド
(粘液物質)”についてはよく研究されており, 主成分はアルギン酸 (alginate)
と呼ばれる粘性の強いムコ多糖体であることが分かっています。ムコイド型緑膿菌は非ムコイド型の菌と比較して,
より多くの多糖体 (アルギン酸) を菌体外に分泌するとされており, この多糖体の分泌量の多い菌株が“ムコイド型緑膿菌”であるとも言えます。
(2) ムコイド型かどうかとbiofilm (バイオフィルム) 産生量とは関連性はありますか???
自然界には緑膿菌だけでなく多くのバイオフィルム形成菌が存在し, それらすべてが固形培地上でムコイド型集落を形成する訳ではありませんが,
緑膿菌については, “ムコイド型かどうかとバイオフィルム産生量”とは密接に関連していると思います。前述のように,
ムコイド型の菌は多くの多糖体を菌体外に分泌し, これによって生体組織や体内の留置カテーテル等に付着してバイオフィルムを形成するといわれています。緑膿菌を含め,
種々の細菌が産生する菌体外多糖 (exopolysaccharide) はグリコカリックス (glycocalyx)
とも総称され, これが主体となってバイオフィルムを形成するとされています。
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