■ 日本薬局方での微生物限度試験法の改正に伴う解釈 | |
【質問】
初めまして。私は製薬会社の品質管理課に勤務しています。 現在, 第十五改正日本薬局方の第一追補での微生物限度試験法の改正に伴い, 弊社での菌試験のあり方を見直しています。しかし微生物試験関係の知識がある人が周りにおらず (上司も含めて), 菌試験関係の本などで調べてはいるのですが, 基礎となる知識もなく, 八方塞のような状態です。質問は初歩的なことで申し訳ないのですが: 質問 (1) 第十五改正日本薬局方の特定微生物限度試験では, まず大腸菌は「乳糖ブイヨンを加え、培養し、増殖が見られた場合は、培養液を軽く振った後、白金耳などでとり、マッコンキーカンテン培地に塗抹する。集落が検出されない場合は、大腸菌陰性である」とあります。私は乳糖ブイヨンで変化がないように見えても, 次のマッコンキーカンテン培地でも検査してみないと, 判定出来ないと思っています (サルモネラも同じく乳糖ブイヨンで培養しますし, それに「増殖が見られない場合は陰性」とも記載されていませんので・・・)。しかし上司は,「変化がないから陰性だ。日局にも増殖が見られた場合と書いてある」と言うので, 今まで“乳糖ブイヨンのみ”で判定してきました。改正後では,「SCDブイヨンを加え、培養→マッコンキーブロスで培養→マッコンキーカンテン培地で培養後、集落が検出されない場合は大腸菌陰性」となるそうです。改正後の試験法を見ると, やはり乳糖ブイヨンだけでは判定出来ないのではないか??? と不安です。措置期限は数年後なので, もしこの方法が間違っているのならすぐに改訂したいと考えています。 質問 (2) 培地の性能試験についてですが,「特定微生物試験の大腸菌」に使用する乳糖ブイヨンの性能試験はどうすればよいのでしょうか??? 大腸菌とサルモネラはまず乳糖ブイヨンにて培養してから菌液を調製するよう記載されています。緑膿菌と黄色ブドウ球菌はSCD培地で培養後, 菌液を調製するとあります。また弊社では, 大腸菌の試験しか行っていません。上司は「ブランクは変化せず, 乳糖ブイヨンだけが濁るなどの変化があれば, 培地の有効性が確認されたことになるし, 大腸菌の試験しか行わないから, その他の菌株は必要ない」と言います。私は大腸菌, サルモネラ, 黄色ブドウ球菌, 緑膿菌の増菌を確認しないと, 「培地性能試験に適合」とは言えないのではないかと考えているのですが・・・ 素人のばかりですので, 会社内ではもうどうすることも出来ず, ここに質問させていただきました。お忙しいところ申し訳ありませんが, どうかご教授の程, 宜しくお願いいたします。 【回答】
質問 (1) の質問者の「私は乳糖ブイヨンで変化がないように見えても, 次のマッコンキーカンテン培地でも検査してみないと判定出来ないと思っています」は正しい判断です。液体培地が細菌で濁ったように見えるのは凡そ10^7 CFU/ml以上です。大腸菌の10^6 CFU/mlぐらいですと, よく試験管を振って光の反射により菌体がキリキラ浮遊しているものを確認できます。10^5 CFU/ml以下ですと, その液体培地での細菌の有無を肉眼で判定することは出来ません。そのため, マッコンキーカンテン培地などの寒天培地に塗抹した方が良いと思います。注意点として, 10μlのループで塗抹する時も検出限界 (たった10μlしか培地に接種していない) を知っておく必要があります。 質問 (2) も質問者は正しい判断をしていると考えます。近年, 多くの培地に試験成績書が添付されているか, 培地の製造元へ依頼すれば直ぐに試験成績書は手に入ります。その試験成績書を参考にして, 培地性能試験の試験方法を考えてください。 (日水製薬・小高 秀正)
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