08/07/31
■ ノロウイルス検体の保存方法
【質問】
 いつも丁寧な回答ありがとうございます。この夏, 施設でノロウイルスが蔓延してしまいましたが, 暑さの折, 検体の保存方法に苦慮しています。

 基本的には, 速やかに提出してくださいとは言っているのですが, 深夜に検体が採取されることもあり, “冷凍保存”してもらうことを推奨しています。しかし, 検体保存用の冷凍庫が各所に在る訳でもなく, 細菌検査室の冷凍庫にとお願いしたところ, 師長を夜中に叩き起こすのですか???(鍵の扱いは責任者と決められている) と言われ, 困惑してしまいました。実際, 空気感染した事例が多々報告されていることですし, 空気中で長く生存できるのなら, そんなに“冷凍保存”にこだわらならなくてもよいのでは, とも考えてしまいます。

 (1) 検体中のノロウイルスは, どの様な環境 (温度・湿度など) で, どの位死滅するのでしょうか???

(2) また, 死滅したウィルスが変質・融解などを起こし, 検査結果に影響することはないのでしょうか???

 検体の保存方法について, より良い方法を教えて下さい。

 検査は, 感度があまり良くないのですが, デンカ生研のイムノクロマト法によって行っています。保険の適用がない為, コスト面を考えると, 外注に出してEIA・PCR検査することが困難です。よろしくお願いします。

【回答】
(1) ノロウイルスの不活化 (死滅) について
 ノロウイルスは85℃, 1分間以上の加熱で不活化します。他に塩素系やアルコールなどの消毒薬で不活化が可能ですが, 非常に物理化学的抵抗力が強いウイルスに位置付けられます。ウイルスの不活化条件を正しく認識することで, 有効で効率的な感染防止対策が可能と思います。 

(2) 検体凍結保存の必要性
 ご指摘のとおり, ノロウイルスは感染力が強く, 吐物などの不適切な処置により集団感染の報告例が過去にありました。検体凍結保存の必要性への疑問はごく自然なものと思われます。しかし, 製造元での糞便検体の保存試験の結果に基づき, 検体採取後は速やかに処理するか, 直ちに処理できない場合は−20℃以下の凍結保存と定めています。糞便検体の冷蔵保存 (4℃) の試験結果では, 25検体中24検体では保存安定性を確認することができましたが, 残る1検体では安定性を確認することができませんでした (偽陰性となった)。糞便中には様々なプロテアーゼ (タンパク質分解酵素) が含まれ, その作用によって検査結果に影響があると考えられます。各医療機関の設備・人員に事情があるかと思われますが, 正しい検査結果を得るためには検査環境の完備, 設備・人員が必要です。

(デンカ生研・青木 智)


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