07/11/16
■ 尿から分離されたグラム陽性桿菌
【質問】
 いつも参考にさせていただいております。さて早速ですが, 質問させていただきます。

 ドクターからの問い合わせで, 尿の検体にて“グラム陽性桿菌”が発育した場合の臨床側からの捉え方を質問されました。「起炎菌の可能性は低く, 常在菌の可能性が高いので問題ない」と答えたのですが, どうも納得されていません。どのようにお答えするのが最適でしょうか???

【回答】
尿から検出されるグラム陽性桿菌について「起因菌の可能性は低く, 常在菌の可能性が高いので問題はない」という返答は間違いです。

(1) 菌が検出される尿ではグラム染色が重要です。細菌性尿路感染では多核白血球が観察されます。検出菌種, 菌量のみで汚染菌は鑑別できません。

(2) 尿路感染症の起因菌となるグラム陽性菌にはCoryneforum bacteriaがあります。C. riegelii (女性の尿路感染), C. urealyticum, Coryneforum CDC group F-1は尿路感染の起因菌とされています。

(3) 常在菌の可能性が高い: 膀胱より上部器官は無菌ですので, 自然排尿の場合には常在菌ではなく, 汚染菌の表現になります。

(4) 最後に, 検出された菌種のみ, または菌量で常在または汚染と判断せず, 検出された材料のグラム染色や材料の採取部位, 輸送, 保存方法, 患者状態などを考慮して判断することを勧めます。

(琉球大学・仲宗根 勇)


戻る