09/06/15,19
■ 尿から分離されたCorynebacterium
【質問】
 いつも「質問箱」を拝見しております。

 持続血尿患者さんの尿が提出されました。肉眼所見ではドロッとした膿のようなゼリーのような塊が尿中にあります。鏡検すると, グラム陽性桿菌3+, 白血球1+ですが, 貪食像は見られません。培養1日後では発育は見られず, 2日後に微小な白いコロニーが発育していました。純培養したものを同定キットにかけると, Corynebacterium pseudodiphtheriticumと推定されたのですが, 初めて耳にする菌名で断定できず, Corynebacterium spp.と報告しました。もし医師が起炎菌と推測し, 薬剤感受性試験をするとしたら, どのような薬剤をどのような方法で行うのでしょうか。ご教示いただければ幸いです。よろしくお願い申し上げます。

【回答】
 Corynebacterium属の菌は人の皮膚や環境中にも多く存在していますが,Corynebacterium pseudodiphtheriticumの感染報告例の多くは呼吸器感染で,次いで心内膜炎,あるいは皮膚感染などです。当院でも過去に尿から分離した経験はありますが,90%以上の菌株は呼吸器系の材料から分離されています。

 質問の菌株は持続血尿患者さんの尿から分離されたとのことですが,入院患者さんの尿から分離されやすい菌として,Corynebacterium urealyticumのという菌種もあります。本菌とC. pseudodiphtheriticumは尿素を分解する性質や,糖類をほとんど分解しない点など,生化学的性状が類似しています。また“培養1日後では発育は認められず,2日後に微小な白いコロニーが発育した”という発育性などもC. urealyticumに類似していますが,両菌は抗菌薬に対する感受性が異なるため鑑別が必要であると考えられます。C. pseudodiphtheriticumの分離菌の多くはペニシリン系やセフェム系薬をはじめ多くの薬剤に感受性で,マクロライド系やリンコマイシン系薬に耐性傾向を示す程度ですが,C. urealyticumはグリコペプチド系やテトラサイクリン系以外の薬剤にはほとんど耐性であるとされています。

 薬剤感受性試験法については,CLSI(Clinical and Laboratory Standards Institute) のDocument M45-Aに,液体希釈法による実施方法が以下のように記載されています。

 『Corynebacterium species(C. diphtheriaeを含む)は溶血ウマ血液(LHB)を添加(2.5%_5%v/v)したCAMHB (cation adjusted Mueller―Hinton Broth)に,MacFarland 0.5の菌液を接種し,35℃,好気環境,24_48時間培養』

 CLSIによる判定基準が提示されている薬剤は,PCG, CTX, CTRX, CFPM, IPM, MEPM, GM, EM, CLDM, TC, DOXY, VCM, LZD, Q/D, CPFX, STなどです。

(公立玉名中央病院・永田 邦昭)


【質問者からのお礼】
 ご返答ありがとうございました。ご丁寧な回答, 参考にさせていただきます。Corynebacteriumの感受性試験はどうするのか, いつも迷っておりました。ありがとうございました。


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