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【質問】
質問がございます。
糞便からの乳酸菌とビフィズス菌の菌数を測定したいのですが, 選択培地は何を使用したらよいのでしょうか???
また, 菌種の同定はどのようにしたらよいのでしょうか???
ビフィズス菌にはTOS寒天培地を, 乳酸菌にはLBS寒天培地を使用しようと考えておりますが,
できれば的確に判定できるようにしたいので, 何か良い方法がございましたら教えてください。
【回答】
乳酸菌にはStreptococcus属, Lactococcus属, Enterococcus属,
Pediococcus属,
Leuconostoc属, Lactobacillus属などが含まれます。ヒト糞便中にはStreptococcus属,
Enterococcus属,
Lactobacillus属などが存在します。糞便の培養による菌数測定では, 複数の培地を用いた光岡らの方法がよく用いられています。その中で乳酸菌とBifidobacterium属
(ビフィズス菌) を対象とした培地は以下のようになります (腸内菌の世界 光岡知足著)。
・Streptococcus属の選択培地としてTATAC寒天培地
・Lactobacillus属の選択培地としてLBS寒天培地
・Bifidobacterium属の選択培地としてBS寒天培地
・Lactobacillus属, Bifidobacterium属, Streptococcus属を検出する培地としてBL寒天培地
また, 発酵乳や乳酸菌飲料中の乳酸菌測定用の公定培地としてはBCP (ブロムクレゾールパープル)
加プレートカウント寒天培地があります。35〜37℃で72±3時間培養し, 黄変したコロニー数を計測します。この培地にはBifidobacterium属は生育しません
(乳酸菌の科学と技術 乳酸菌研究集談会編)。
Bifidobacterium属の選択培地として使用を考えておられるTOS寒天培地も使用されています。コロニーの大小により,
Lactobacillus属との識別を行っています。ただ,
この培地は本来乳製品中の
Bifidobacterium属の計数を目的としているため,
Streptococcus属やEnterococcus属については考慮されていません。いずれの選択培地も完全な選択性をもつ訳ではなく,
常に例外が生じます。複数種類の培地の使用により正確性は高まるかと思いますが,
的確に判定するにはコロニー形態の観察とグラム染色による細菌細胞の形態観察が必要と思われます。しかし,
これらの判別には経験と熟練を要します。光岡らの方法に観察の仕方なども詳しく記載されていますので参考にしてください。また,
菌種の最終同定には16S rDNAの塩基配列を調べること, または生理・生化学性状試験が有効です。
(テクノスルガ・ラボ 久田 貴義)
【質問者からのお礼】
ご回答ありがとうございます。ホームページ拝見させていただいております。回答して頂いている方の一人は,
私の大学の先輩でびっくりしました。
乳酸菌・ビフィズス菌について光岡先生の方法を文献から探しましたら,
かなり年代物でしたので, その後, 検査・分析方法が変わっていないかが知りたかったのでとても参考になりました。有難うございました。
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