09/11/13
■ 乳酸菌飲料の食中毒菌
【質問】
 いつもお世話になっております。弊社ではヨーグルトの種菌 (粉末) を販売しています。そこで品質管理をしている●●と申します。 種菌の微生物検査で, 乳酸菌加粉末清涼飲料の試験法で一般生菌数測定をしております。

 1 μg/mLのペニシリンGを添加した培地による生菌数測定と, 4%NaCl BCP培地での生菌数測定の2つの値の“合計”が乳酸菌以外の一般生菌数として検査しているのですが, 4%NaCl培地の方でいつも100〜1200個/gramくらい出てしまいます。この培地に出るのが, 最近調べてわかったのですが, BacillaceaeMicrococcaceaeが生育すると知り, これ (4%NaCl BCP培地に発育してくる菌集落) は食中毒菌のセレウスや黄色ブドウ球菌の可能性も考えられるのでしょうか??? マンニットやNGKGなどの培地を使い検査した方がいいのでしょうか???

 しかし乳酸菌が沢山生菌している中では, 乳酸菌が食中毒菌を抑制して検出するのは難しいと聞いたことがあり, マンニットやNGKGを使用して公定法などの方法で普通に検査しても意味がないのかなとも思いました。どうなのでしょうか??? 

 検査するとなるとセレウスや黄色ブドウ球菌の検査する培地などをこれから一式揃えなくてはならないという事情があります。現在までにこの製品で問題はないのですが, 実際に子供やお年寄りの方がヨーグルトを食べていただいているので悩んでいます。

 また, このような乳酸菌を使用した製品中の食中毒菌を検査できる培地や検査方法を教えていただけませんか???

お忙しい中すみませんが, アドバイスよろしくお願い致します。

【回答】
 質問内容から, 種菌 (粉末) は質問者の会社で製造しているのではなく, 販売のみと推測しました。この場合は, 製造元に「病原微生物を含まない」という保証書をつけてもらえばよいのではないでしょうか。食品衛生法の粉末清涼飲料の成分規格には「大腸菌群が陰性であり, 生菌数は3,000/g以下でなければならない」と記載されています。この生菌数については, 病原微生物の有無について確認するということは書かれていません。すべての微生物において, 病原性の有無を確認するのは現実的でなく, 限られた情報を信頼して食品として提供する方が妥当と考えます。また, どうしても知りたい場合には, 4% NaCl BCP培地に増殖した代表的なコロニーを純培養し, 信頼できる検査機関に依頼し同定してもらうことを勧めます。その後は, 4%NaCl BCP培地でのコロニー性状で判定されることを提案します。

 セレウスや黄色ブドウ球菌の食中毒の予防は下記の細菌の性状を参考にし, ヨーグルトのpHや種菌 (粉末)の保管・流通温度を確認し, 総合的に考えてください。

「セレウスの増殖可能pH域は、4.9_9.3といわれ、多くの食品で増殖できる。増殖温度は10_45℃で、至適温度は28_35℃、発芽時間は1_59℃と広い範囲で認められる。従って、10℃以下の食品の低温保存は本菌食中毒の予防に有効な手段と言える[http://www.asama-chemical.co.jp/KIN/BC/BC.HTM]」。

「黄色ブドウ球菌は、グラム陽性で通性嫌気性である。最適の増殖温度は35_37℃であるが、増殖可能の温度範囲は6.6_45.5℃と幅が広い。しかし、毒素産生は20℃以上で行われる。耐塩性があって、7.5%の食塩培地に増殖する[http://www.asama-chemical.co.jp/KIN/ST/ST.HTM]」。

(日水製薬・小高 秀正)


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