08/02/12
■ 乳酸菌生菌粉末の細菌汚染管理
【質問】
 臨床微生物迅速診断研究会のHPを見て質問のメールを致しました。私は, ●●●という化学会社で食品開発を担当している■■と申します。現在, 食品の原料として乳酸菌生菌の粉末を開発しております。なお, 私は以前, 某乳業会社で微生物検査関係の研究も行っていた経緯もあり, 一般的な細菌検査法に関しては大体の知識を持っております。

 現在, 私は“乳酸菌粉末の品質管理指標”を考えておりまして, どのように雑菌汚染の有無を検査によってチェックするかに関して迷っております。と言いますのも, 乳酸菌を除いた一般生菌数を測定することが困難であるからです。現状, 私の考えでは下記の3つをもって雑菌汚染の有無を確認しようと考えております。

(1) 大腸菌群(衛生指標菌として)
(2) カビ・酵母数
(3) 黄色ブドウ球菌、セレウス菌などの食中毒菌の検査

 ただし, この方法では, 理論的にすべての汚染菌の有無が判断できないと考えられます。通常の食品でしたら, このような検査に加えて生菌数の指標があり, 担保されると考えられますが, 今回の場合は生菌数に対応する指標がありません (ただし生菌数が, 一定条件で生育する菌数であり, あくまで指標であることは認識しております)。

 臨床微生物迅速診断研究会のHPを参照しますと, 上記の目的を満たす方法として2つが提案されております。これを参考にしようと考えたのですが, その際に考えられました質問をさせて頂ければ幸いです。

(1) 通常の生菌数検査から, 乳酸菌数, カビ・酵母数を“差引いた値を生菌数”とする方法

(2) 乳酸菌加粉末清涼飲料の試験法を参考とする方法

〔質問1〕
 (1) の方法の場合, 細菌検査のバラツキから, 乳酸菌が主体の今回の製品であれば, この方法で算出すると, 実際は乳酸菌数のバラツキからそれ以外の雑菌数の推定は困難と考えますが, やはり「不適当」と考えられますでしょうか。

〔質問2〕
 (2) の方法では, 1 μg/mLのペニシリンGを添加した培地による生菌数測定と, 4%NaCl培地での生菌数測定の2つの値の“合計”が乳酸菌以外の生菌数となりますが, この検査方法はどのような原理となっているかご存知でしたら教えていただけませんでしょうか。その質問の具体的な内容を下記にまとめました:

○ 1 μg/mLのペニシリンGの役割
 すべての細菌類の生育を抑制して, カビ・酵母数の測定をする目的でしょうか??? それとも, 1 μg/mLのペニシリンは, 乳酸菌以外の細菌であれば, その一部が生育できるような“絶妙な濃度設定”ということなのでしょうか???

○ 4%NaClの役割
 4%NaCl存在下でも生育できる菌種とは, どのような菌種が想定できますでしょうか。

【回答】
〔質問1〕については, 菌数の値として「不適当」と考えられます (菌数のオーダーが違うため)。しかし, 菌叢としては有効と考えます・・・(それぞれの菌種, 菌群で予想される菌濃度が大きく異なると, 四則の原則から+、−の意味がなくなるという意味)

〔質問2〕(2) の 1 μg/mLのペニシリンG添加の理由は, 食品衛生小六法に書かれているように乳酸菌を抑制するために添加しています。すなわち, 乳酸菌以外の発育する微生物を検出します。4%NaCl存在下でも生育できる菌種としては, いわゆる中好塩性細菌のBacillaceaeMicrococcaceaeなどが発育できます。

(日水製薬・小高 秀正)


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