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【質問】
教えて下さい。肺炎球菌の同定でオプトヒンテスト「陽性」を示したのですが,
ニューモキツトの凝集が陰性でした。胆汁溶解テストもおこないましたが, 溶菌は微妙でした。コロニーは中央が陥没しているようにみえますが,
典型的ではありません。どのように判断したらよいのでしょうか??? よろしくお願いいたします。
【回答】
オプトヒン感受性試験と胆汁溶解試験は肺炎球菌の鑑別同定において重要な試験法ではありますが,
共に確実なものではなく, 僅かながら例外が存在します。Streptococcus oralisの中にはオプトヒン感受性の菌株が存在することが知られており,
またオプトヒン耐性の肺炎球菌も存在しています。従ってオプトヒン感受性試験のみでの鑑別同定には限界があり,
胆汁溶解試験などを併用することが薦められますが, 肺炎球菌の“ラフ型”株は胆汁に溶解されないという報告も認められます。ご質問の菌株は“オプトヒンテスト「陽性」”であったとのことですが,
実際には何ミリ程度の阻止円が形成されたのでしょうか???肺炎球菌以外のα-溶血レンサ球菌でも阻止円が形成されることがありますが,
ほとんどが判定基準の阻止円直径以下のミリ数です。試薬メーカー毎に判定基準が異なるため,
使用説明書に従った判定が必要ですが, 一般に好気培養よりも炭酸ガス培養の方が阻止円直径が小さくなる傾向があります。集落は“中央部が陥没しているように見えますが,
典型的ではありません”ということですが, 光沢は認められたのでしょうか???
典型的な肺炎球菌は莢膜を持つため, 湿潤性で光沢のある集落を形成します。他のα-溶血レンサ球菌の中にも中央部が陥没したように見える菌株も存在しますが,
多くの場合は光沢は強くありません。ただ莢膜の産生が弱くなると, 光沢も弱くなる傾向もあります。“ニューモキットでの凝集が認められなかった”
ということですが, Slidex pneumo-Kitは肺炎球菌の莢膜特異抗原に対する抗体をラテックスに感作したものであるため,
莢膜を持たない菌株では凝集は認められないということになります。つまり肺炎球菌の莢膜消失株か,
その他の菌種かということになりますが, オプトヒンに対する阻止円直径の大きさやグラム染色での菌形態なども参考にしながら,
慎重に判断する必要があると思います。
肺炎球菌はレンサ球菌属の中の ” mitis group “ に含まれ, Streptococcus
mitis や Streptococcus oralisと16S rRNA塩基配列が99%以上同一であるとされています。遺伝子学的にも近縁であるため,
実際に一般の病院や検査施設では他の菌種との鑑別が困難な肺炎球菌も存在します。難しい問題ではありますが,
臨床的にはその菌株が起炎菌として存在しているか否かが重要になりますので,
材料の直接塗抹標本で, 肺炎球菌を疑う菌体が多核白血球とともに多数認められているかどうかも判断材料の一つになるかもしれません。
(公立玉名中央病院・永田 邦昭)
【質問者からのお礼】
有難うございました。オプトヒンテストは14 mmで, コロニーの光沢はあまりありませんでした。確かに鏡検の結果が判断材料のひとつになりました。例外がどれだけあるのかなど,
検索できなかったので勉強になりました。
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