■ “黄色ブドウ球菌”ですか??? | |
【質問】
●●の食肉加工会社で細菌検査をしている■■と言います。 うちの検査室では, 黄色ブドウ球菌の検査に卵黄加マンニットとウサギプラズマを使っていますが, 卵黄加マンニットで培地が黄色, 菌(集落)自体が黄色っぽい白色, 卵黄反応「陰性」, ウサギプラズマで「陽性」(凝固またはフィブリン反応) の菌が出ますが, これは“黄色ブドウ球菌”と考えてよいのでしょうか??? 手間がかかることから, グラム染色をすることは難しく, 別の培地などを買う予算もないので, どう判断してよいか困っています。かなり初歩的なことで申し訳ないのですが, 宜しくお願いします。 【回答】
黄色ブドウ球菌を純粋に「Staphylococcus aureus」に置き換えて回答するならば, 卵黄反応は「陰性」ですが, マンニットを分解し, コアグラーゼ試験が「陽性」と判断できますので, S. aureus (黄色ブドウ球菌) である確率はかなり高いと言えます。これはあくまでも“可能性がかなり高い”ということに過ぎません。きちんと同定するのであれば, 少なくとも「簡易同定キット」を使用するべきと考えますが。 質問者はグラム染色を実施していません。従って回答は, この菌株がグラム陽性であり, 諸々の集落所見や発育に要した時間などのすべてが Staphylococcus 属菌 (ブドウ球菌) に合致していることを前提としています。と言うのは, ひょっとしてブドウ球菌とはまったく異なる菌種の可能性も充分に考えられるからです。例えば, 腸球菌 (Enterococcus 属菌) も卵黄加マンニットで, ブドウ球菌よりは少し長めの培養が必要ですが, この培地に確実に発育します。またコアグラーゼも黄色ブドウ球菌より時間は多少かかりますが「陽性」を示してもおかしくないのです。腸球菌は, グラム染色してもグラム陽性の球菌ですから, 慣れない観察者はブドウ球菌との鑑別が困難な場合も考えられます。反面, 大腸菌と大腸菌群も同じ様に取り扱う水質検査と同様, ブドウ球菌/表皮ブドウ球菌/腸球菌もまとめて評価するのか, それとも個々の菌種で評価がまったく異なるのかなどの基本知識をもたない回答者には, この程度の回答しかすることが出来ません。 (信州大学・川上 由行)
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