08/06/30
■ “パラベン”を分解する細菌
【質問】
 化粧品, 食品などの微生物検査業務に従事している■■と申します。
 
 以前, 細菌の増殖が認められた化粧品より“フェノール臭”がすることがあり, パラベンを分解する細菌ではないかと推測しています。この細菌について同定した結果, Enterobacter gergoviaeでした。パラベン類 (特にメチルパラベン) を分解 (資化) する細菌の種類と分解産物に関して教えて下さい。また, 参考になる文献などがありましたら併せて教えて頂けたらと思います。よろしくお願い致します。

【回答】
 回答者は防腐剤のパラベン類 (methyl 4-hydroxybenzoateなど) を用いて細菌の資化性試験を実施した経験はないですが, 4-hydroxybenzoate (4-ヒドロキシ安息香酸) を用いて、細菌の資化性を調べることがしばしばあります。確かにArthobacter属の細菌から, 4-hydroxybenzoateを資化するデータも得られました。また, Bacillus属, 腸内細菌のEnterobacter, Klebsiellaなどに関する文献に4-hydroxybenzoateに対する資化性の情報も記載されています。以上のことから, 4-hydroxybenzoateを炭素源として利用する細菌は確かに存在しています。また, パラベンのエステル部分が水の存在下で酸に変化し, ある細菌に炭素源として利用されることは可能でしょう。

〔参考文献〕
(1) Sneath PHA, Mair NS, Sharpe ME, and Holt JG: Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology. Vol. 2. 1986, Williams and Wilkins, Baltimore.
(2) Brenner DJ, Krieg NR, Staley JT, and Garrity GM: Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology. Vol. 2: The Proteobacteria, Part B The Gammaproteobacteria. 2005. Springer.
(3) Crawford L: Pathways of 4-hydroxybenzoate degradation among species of Bacillus. J. Bacteriol. 127: 204〜210, 1976.

(テクノスルガ・ラボ 立里 臨)

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