08/01/11
08/01/15
Penicillium属のマイコトキシン産生培地
【質問】
 はじめまして。今年から微生物を専門とした研究室に所属することになり, この夏, チーズを試料とした実験を卒論の研究の練習がてら行なっています。文献やインターネットを利用して色々と調べたのですが解決に至らず, メールさせていただいております。

まず, (1) Penicillium属のマイコトキシン生産性を定性的に調べる培地組成を教えてください。

加えて, (2) YES培地の組成と出現コロニーの判定法なども教えていただけるとありがたいです。乱文失礼いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。

【回答】
(1) Penicillium属のマイコトキシン生産性を定性的に調べる培地組成

 “定性的”か否かにについては不明ですが, Czapek yeast autolysate agar (CYA), Yeast extract sucrose agar (YES), またはPotato-dextrose agar (PDA)がよく使用されているようです。Penicillium属のカビ毒や代謝産物について網羅的にまとめたFrisvad et al.(2004)の文献が非常に参考になるかと思います。

〔参考文献〕
Firsvad JC et al.: Mycotoxin, drugs and other extrolites produced by species in Penicillium subgenus Penicillium. Studies in Mycology 49: 201〜242, 2004.

 オランダの菌株保存機関であるCBSのホームページからこの論文を全文pdfでダウンロードできます[http://www.cbs.knaw.nl/simonline/index.htm

(2) YES培地の組成と出現コロニーの判定法
 培地組成は以下の通りになります。

・YES培地 (酵母エキス・スクロース寒天培地)の組成:
酵母エキス 20 g, スクロース 150 g, 寒天 20 g, 蒸留水 1,000 mL (MgSO4・7H2Oを0.5 g加える場合もある)。

また, (1)で紹介した

・CYA培地 (ツァペック酵母エキス寒天培地) の組成は:
NaNO3 3 g, K2HPO4 1 g, KCl 0.5 g, MgSO4・7H2O 0.5 g, FeSO4・7H2O 0.01 g, スクロース 200 g, 寒天 20 g, 蒸留水 1,000 mL (pH 6.7)

となります。「出現コロニーの判定法」というものは知られていません。   Aspergillus属菌に知られるアフラトキシンなどのカビ毒では特殊培地における呈色反応によるカビ毒産生の判定法が知られていますが, Penicillium属では知られていません。

(テクノスルガ・ラボ・喜友名 朝彦)


【読者からの意見】
 質問箱に掲載されている「 Penicillium 属のマイコトキシン産生培地」への回答の中にあります CYA 培地 (ツァペック酵母エキス寒天培地) の組成に誤りがあります。回答者へ再確認を依頼し, 必要に応じて訂正をお願いしたいと思います。

(1) 酵母エキスの重量が未記載です。
(2) スクロース 200 g は20 gの間違いだと思います。200 gは CY20S 培地の場合だと思います。
(3) 文献で確認していませんが, CYA 培地は pH が無調整のはずです。

【回答の訂正】
 確かにご指摘の通り, 私の回答に誤りがありました。酵母エキス量の記入漏れとスクロースのグラム数が1桁多かったです。下記に回答の一部, CYA培地の組成について訂正します。

・CYA培地(ツァペック酵母エキス寒天培地)の組成:
NaNO3 3 g, K2HPO4 1 g, KCl 0.5 g, MgSO4・7H2O 0.5 g, FeSO4・7H2O 0.01 g, 酵母エキス 5 g, スクロース 30 g, 寒天 20 g , 蒸留水 1,000 mL (pH 6.7またはpH 6.3±0.2) 

pHについては, 文献, 菌株保存機関によってpH6.7, pH 6.3±0.2, pH6.0-6.5と変動幅があります。培地の組成についても同様で, 上記の組成にさらに微量元素などを添加する場合もあります。

(テクノスルガ・ラボ・喜友名 朝彦)


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