08/01/25
Pseudomonas fluorescensと“紫色色素”
【質問】
 食品会社の品質管理部に所属する者です。

 当社テスト品の社内保存試験 (10℃で4日間) を実施したところ, 商品が“紫色”に変色してしまいました。標準寒天培地にて20℃で48時間培養したところ, “紫色のコロニー”が検出されたため, 外部機関へ同定を依頼したところPseudomonas fluorescensとの報告がまいりました。Pseudomonas fluorescensは蛍光緑黄色色素pyoverdinを産生するとの理解ですが, 紫色の色素はどのような条件下で産生するのでしょうか???

【回答】
 Pseudomonas fluorescensは, 一般に蛍光性の水溶性色素 (pyoverdin) を産生します。ポイントは緑黄色蛍光性かつ水溶性であることです。この蛍光色素を確認するためには, 蛍光色素産生を促進する培地 (King’s B培地) にて培養した後, 紫外線下で観察します。水溶性色素であることから, 培地の寒天も紫外線下で明瞭な蛍光を発します。

 質問者の標準寒天培地での培養物の“紫色”はコロニーに限定されるものか, それとも培地まで染められているのかが判断できませんが, コロニー色が紫色を示すPseudomonas fluorescensはあまり考えられません。回答者は標準寒天培地, あるいは普通寒天培地にて紫色コロニーを呈するPseudomonas fluorescensを経験したことがありません。また, 菌株の表現型は定型的な性状を示さないこともあります。質問者の分離された菌株がPseudomonas fluorescensに帰属するものであるとしたら, 紫色の色素はこの分離株特有の性質でしょう。産生条件については, 質問の内容によると, 標準寒天培地にて確認ができることから, この分離株は特有の培養環境ではなく, 極普通の生育培地で菌の生育に伴って色素を生成すると推測されます。

(テクノスルガ・ラボ・立里 臨)


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