08/09/25
■クオンティフェロン (QFT) 測定値の変動
【質問】
 はじめて質問させていただきます。とても悩んでおりますので, どうかご教示ください。老人福祉施設に勤務している●●と申します。

 結核を発症した利用者様と仕事で接触がありました。当初, QFTの検査までは必要ないというのが保健所の見解でしたが, 個人的に非常に心配だったため, 8月6日にQFT検査を受けました。最終接触日は5月30日, 検査は8月6日実施。その結果は, ESTA-6 0.003, CEP-10 0.000で「陰性」でした。その後, その方のガフキー数値が高かったので, 保健所から新たにQFT検査の指示がありました。再度9月2日に検査を受けたところ, 結果は「陰性」でしたが, ESAT-6 0.027, CEP-10 0.004と, 前回の検査より数値が上がっていました。このように数値が短期間であがるというのは感染の危険性があるのでしょうか。このようなQFT検査数値の変化の可能性についてどうぞ教えてくださいますようお願いいたします。お忙しいところ大変申し訳ございませんが, どうかご教示くださいますようにお願いいたします。

【回答】
 結論から言うと「陰性」判定の範囲内で, その検査数値の上下に過度に過敏になるのは無意味なことです。

 臨床検査の領域では“再現性”という言葉がとても重要です。同じ検体を繰り返し測定して, どの程度得られた測定値が変動するかということです。いつも同じ数値が得られるように努力していますが, なかなかそうはなりません。例えば血液の赤血球の数を測定したとします。測定値として500万個/μlという数値が得られたとしても, 本当に5,000,000個か, 1個少ない4,999,999個なのか, その“真の値”を知るのは神様のみです。1μ1の血液中で赤血球が1個増えたか, 減ったか, あるいは同じかを正確に測定する技術は2008年の現在, 臨床検査にはないのです。同じようにQFT検査でも, ESTA-6とCEP-10の抗原刺激で産生されるインターフェロンγの量の測定にも変動があります。そのため, 何回測定しても「陽性」は「陽性」に, 「陰性」は「陰性」に定性判定されるように, 「陽性」と「陰性」の判定の“区分値”が設定されているのです。検査数値が変化したか否かを判断する場合には, その検査数値がどの程度の再現性をもつのか知った上で行う必要があります。QFT検査から得られる陽性・陰性の定性判定には再現性がありますが, 定量値としての検査数値にはそれほど高い再現性がある訳ではありません。

(琉球大学・山根 誠久)


戻る