07/07/30
■クオンティフェロンTB-2Gについて
【質問】
 いつも勉強させて頂いております。総合病院勤務の内科医です。

 結核 (活動性もしくは潜在性) の診断において, 最近認可されたクオンティフェロンTB-2G (以下QFT) について教えていただきたく存じます。

 当院でも, 院内で結核患者さんが発生した時に, 家族やスタッフにおける接触者健診が必要なことがあります。その時に, このQFTを使用するように担当保健所から通達がありました。測定原理などはおよそ理解しているつもりですが, QFTの臨床上の適応についてまだデータが確立していないように思うのですが, 

(質問1) 接触者健診にて既に広く使用されているものでしょうか??? 特異度は高い検査であると理解していますが・・・

(質問2) QFT陽性であり, 活動性結核の根拠がなければ“Latent TB”と理解してよいのでしょうか??? “Latent TB”であれば化学予防の適応になりますが, これまで“Latent TB”はツ反の新規陽転化で定義されてきており, 化学予防の根拠や放置した時に, 後にTBを発症する危険度はQFTで検出した場合ではこれまでのデータと異なるのではないでしょうか・・・

(質問3) 一律にQFTを接触者健診に用いた場合, 陽性であれば化学予防の適応になるのでしょうか??? その根拠は・・・

(質問4) また保険適応が本年承認されたようですが, 接触者健診での使用にも保険が通るのでしょうか??? (高コストの検査なので, 病院にも負担が大きいと思われます) 他施設ではどのようにされておられますでしょうか???

ご経験のある先生方のご助言いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

【回答】
(回答1)
 QFTが発売されて以来, 接触者健診にも広く使用され, 今までに多くの学会発表や論文が出されております。さらに, 2007年4月に「改正感染症法に基づく結核の接触者健康診断の手引き」, 7月に改訂2版が出されました。この手引きによりますと,「結核感染の有無を検査する方法として従来は, ツ反検査が標準法であった。しかし, ツ反検査は既往BCG接種の影響を強く受けるため, 結核に未感染であっても陽性を示すことが多く, 感染の診断が難しかった。_中略_そこで, 本手引きでは, 結核感染の有無の検査として, QFTを第1優先の検査と位置づけた。ツ反検査は, 乳幼児対象の検査, または実施体制の問題によりQFTが実施できない場合の検査, あるいは集団感染対策でQFTを効率よく実施するための補助的検査として位置づけた」。また「これまで接触者健診の中でツ反検査を行うとされてきた状況, つまり結核患者が発生し, その接触者に感染が疑われる場合 (とくに初発患者が喀痰塗抹陽性の肺結核患者の場合) には, QFTをツ反に代わる検査として実施することが出来る」とあり, 今後さらに広く使用されるものと思われます。

(回答2)
 QFT検査で「陽性」と判定された場合, それが結核の既往 (過去の結核罹患や古い感染歴) を意味するのか, それとも最近の感染を意味するのか区別することは出来ません。特に高齢者など, 結核既感染率の高い集団では, 「陽性」は「最近の感染」と言えない事例もあります。従って, 症状や画像所見の有無等について精査を行い, 総合的に判断する必要があります。そこで結核の臨床的特徴を呈していない無症状病原体保有者と診断し, 医療が必要と認められた場合は「潜在性結核感染症」としての治療を行うこととなります。また, ツ反陽性者とQFT陽性者を化学予防しないで放置した場合のTB発症の危険度は, QFTの方が特異的に結核を検出することを考えると, QFT陽性者からの方がTB発症の危険度が高いと推測されます。しかしながら, 実際はQFT陽性者で必要と認められた場合は治療を行いますので, TB発症の危険度は低くなると思われます。

(回答3)
 「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第12条第1項及び第14条第2項に基づく届出の基準について」(平成18年3月8日付健感発第0308001) により, 結核の無症状病原体保有者のうち医療が必要と認められる場合 (潜在性結核感染者) についても届け出の対象となり, 従来の「初感染結核に対する化学予防」ではなく「潜在性結核感染症の治療」という観点から接触者健診の事後措置などを行う必要があります。従って, QFT検査の結果が「陽性」であれば, 症状や画像所見の有無等について精査を行い, 結核の臨床的特徴を呈していない無症状病原体保有者と診断し, かつ医療が必要と認められた場合は, 感染症法第12条第1項の規定による届出を行うとともに,「潜在性結核感染症」としての治療を行うこととなります。

(回答4)
 平成17年12月26日付 保医発第1226001号 厚生労働省保険局医療課長通知により,『クォンティフェロンTB-2G』(一般的名称: インターフェロン-γ遊離試験キット) による結核菌特異蛋白刺激性遊離インターフェロン-γ測定が, 平成18年1月1日より保険適用となりました。算定できる保険点数は,

(1) 結核菌特異蛋白刺激性遊離インターフェロン-γ測定 410 点
(2) 検体検査判断料 144 点

 結核菌特異蛋白刺激性遊離インターフェロン-γ測定は, 診察または画像診断などにより, 結核感染が強く疑われる患者を対象として測定した場合のみ算定できます。一般に保健所が発動した接触者健診の場合は公費負担ですが, 結核集団感染対策の対象が病院などの医療機関であった場合は, 健診の実施方法について保健所と当該病院間で十分協議する必要があります。このような場合, 病院などでは「院内感染対策」の観点からも, 医療法などに基づき, 主体的に原因調査や感染拡大防止に取り組む必要があることから, 都道府県知事等からの勧告に基づく (感染症法17条の) 健診ではなく, 病院自らの責任で職員などの健診を実施する方法も考えられます。例えば, 健診対象者が少人数の職員に限定される場合などは, 健診方法を助言した上で, 健診の医学的検査部分の実施を病院に任せる方法が多いと思われます。一方, 集団感染対策としての健診対象者が病院職員のみでなく, 入院・外来患者などを含めた多数に及ぶ場合は, 保健所の積極的関与が必要です (結核の接触者健康診断の手引きより)。また, 医療従事者などの健康管理のためのQFT検査には健康保険は適用にはなりません。

(日本ビーシージー製造・山崎 文子)


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