07/07/10
07/07/11
■クオンテイフェロン (QFT)と麻疹感染
【質問】
 臨床微生物迅速診断研究会にはいつも貴重な情報を教えていただき, 感謝しています。ところで, 結核菌感染診断についての質問です。

 最近, クオンテイフェロン (QFT) という従来のツベルクリン検査に代わる結核菌感染診断検査法が導入されてきました。ご存知とも思いますが, この原理は, 結核菌を貪食したマクロファージが, IL12, IL18を分泌し, Th0をTh1に分化させ, Th1がIFN-γを産生するので, このIFN-γを測定することで結核感染を診断するという検査です。実際には, 被検者の血液に結核菌特異的な抗原を添加し, 培養後, 血漿中に分泌されるIFN-γをELISA法で測定します。

 そこで質問なのですが, 麻疹ウイルスに感染すると細胞性免疫が低下するという話を聞きました。麻疹ウイルスのレセプターが活性化リンパ球にあるSLAMであり, 活性化リンパ球に感染することで, 細胞性免疫が低下することが予想されます。そうすると, 結核患者が麻疹にも同時感染した場合, IFN-γの産生が低下し, QFTの検査結果に影響がでるでしょうか??? ご教示お願いします。

【回答】
 HIV感染, AIDS, 臓器移植などにより免疫抑制されている者, あるいは糖尿病, ケイ肺症, 血液病 (白血病, 悪性リンパ腫など) 等により免疫が低下している可能性がある者, また薬剤などにより免疫抑制されている者は, その免疫状態によりクォンティフェロン (QFT) での検査の結果が偽陰性を示す可能性があります。ご質問の通り, 麻疹ウイルスのレセプターはリンパ組織に特異的に発現する膜蛋白SLAMであり, これは未熟胸腺細胞, 活性化されたリンパ球・単球, 成熟樹状細胞に発現し, リンパ球の活性化とIFN-γ産生制御を誘導すると報告されています。従って, 麻疹ウイルスの感染によっても, 細胞性免疫の低下が考えられますので, QFTの結果が「偽陰性」を示す可能性が否定できません。このような症例において, 本検査結果が「陰性」, または「判定保留」となった場合は, 他の臨床所見と併せて総合的に結核感染の有無を判断する必要があります。

 なお, 本試薬キットには, 陽性コントロールとしてmitogen (PHA) を添付しています。ESAT-6またはCFP-10の値 (判定にはESAT-6, CFP-10のうち, 高値を採択) が0.35 IU/mL未満であっても, mitogenの値が0.5 IU/mL未満であった検体は, 免疫不全などが考えられますので, 判定を行わず「判定不可」とします。

(日本ビーシージー製造・河尻 克秀)


【質問者からのお礼】
 丁寧なご回答ありがとうございました。参考にさせていただきます。


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