■ ラーメン・スープ工場内から検出される“カビ” | |||||||||||
【質問】
初めまして。ラーメンスープ等の製造を行う食品工場で品質管理を行っている者です。 近頃, 工場内において外観上似たような種類のカビを頻繁に検出するようになりました。これらのカビが同種類のものなのか, あるいは複数の種類が存在しているのか分かりません。工場内の環境を知る上での資料になればと思います。 検出されるカビは標準寒天培地 (31℃, 48時間培養), ポテトデキストロース寒天培地(25℃, 4日間培養) で確認できます。ポテトの方が発育は良好です。両方の培地あるいはどちらかだけの培地に生えます。シャーレに発育するコロニーの外観は粉状, ビロード状で, 色はオリーブ色です。シャーレの表と裏では極端に色の違いはありません。顕微鏡でも確認したのですが (シャーレからコロニーの一部を直接採取), クラドスポリウムやペニシリウムに近い種類なのかと思いますが, 判断が困難です。これまでに検出したカビのシャーレの写真(表側) と顕微鏡(400倍) での写真を添付致します。情報等不足が多々あり, お手間をお掛け致します。お忙しいところ申し訳ありませんが, よろしくご検討お願い致します。 A (ポテト培地), B (ポテト培地), C (標準寒天培地) は検出したカビ別で,
顕微鏡
(B)
(C)
【回答】
今回のカビはPaecilomyces属の中でも出現頻度の高い菌種 Paecilomyces variotii(ペシロミセス バリオッティ)に最も類似しているように思われますが, 種名を明らかにするためにはより詳細に観察する必要があります。 ペシロミセス属はペニシリウムと分類学的および形態的にも近い菌群です。ポテト培地などに植えると生育は良好で,
写真に示すような黄土色〜オリーブ色で粉状〜ビロード状のコロニーを形成します。30℃付近でも生育は良好です。形態的には胞子
(分生子) を形成するフィアライドの形が基部が円筒形〜楕円形とやや膨らみ,
その先端部がくちばし状に細くなるのが特徴です (写真A, Cの部分拡大像参照)。また,
ペニシリウム属と異なり, フィアライド同士がほうき状に密着せずやや散開しているのも特徴の一つです(写真B,
Cの部分拡大像)。また, ペシロミセス属は自然界では土壌環境中に幅広く生息しており,
空気中や食品等からも多く検出されています。この属の中には耐熱性が強い菌種が知られており,
しばしば食品等の汚染菌としての報告例が多々見受けられます。以上, ご参考になれば幸いです。
(テクノスルガ・ラボ 喜友名 朝彦)
【質問者からのお礼】
お忙しい中, ご検討とご回答をいただき有難うございました。食品汚染菌として耐熱性が強い菌種もあるとのことで, 今後の工場内の衛生環境にとても参考になります。今後ともよろしくお願い致します。 |