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【質問】
「質問箱」をよく参考にさせていただいております。回答いただけたらと思いメールいたしました。私は現在,
中規模病院 (約80床) の微生物検査をしております。微生物検査は3年目になるのですが,
現在の検査室規模 (技師3名中微生物担当1人) で黄色ブドウ球菌の判定に戸惑っています。
培地は栄研の“エッグヨーク食塩寒天培地”の生培地を使用しています。当院では卵黄反応のある薄黄〜黄色コロニーのグラム陽性のブドウ球菌は
Staphylococcus aureusと判定しています。その後MRSAの判定はディスク法で施行しているのですが,
今回初めて“卵黄反応陽性の白色コロニー”が出てしまいました。「卵黄反応陽性=コアグラーゼ陽性」と先輩から教わっていましたので,
今後どの様に対応してよいものか困惑しております。他の連鎖球菌やグラム陰性桿菌などは同定キットを使用しているのですが,
ブドウ球菌のみキットを使用していません。ちなみにディスク法で「メチシリン耐性」となりましたので,
現在のところ「MRSAまたはMRCNSの可能性あり」で中間報告しております。お忙しいとは思いますがご教授下さい。よろしくいお願いいたします。
【回答】
Staphylococcus aureus はエッグヨーク (卵黄) 食塩寒天培地中のマンニットを分解して酸を産生し,
培地を黄変させますが, S. aureus の100%の菌株がマンニットを分解するという訳ではありません。マンニット非分解性のS.
aureus が稀に存在し, これによる食中毒の事例なども報告されています。分離菌は卵黄反応陽性であったとのことですから,
グラム染色を実施してグラム陽性球菌であれば, S. aureusである可能性が高いと考えられます。あくまでエッグヨーク食塩寒天培地での性状はS.
aureusを推定するものであり, 疑わしい場合にはコアグラーゼ試験などを実施して確認することを勧めます。コアグラーゼ試験用の凍結乾燥したウサギプラズマ
(栄研化学) も市販されていますので, 常備しておけば, 必要時に溶解して使用することができます。またラテックス凝集反応を利用した簡便な鑑別試薬や発色基質を用いた鑑別培地なども市販されています。いずれも同定キットよりも安価で,
簡便にS. aureusの鑑別が可能です。
また, 回答者はエッグヨーク食塩寒天培地の使用経験はありませんが, Bacillus
cereus はブドウ球菌の選択分離培地に発育し, マンニット非分解 (白色)
で, かつ卵黄反応陽性の集落を形成します。集落はブドウ球菌のような盛り上がりはなく,
比較的平坦な集落です。B. cereusはグラム陽性桿菌ですから, グラム染色すれば容易にブドウ球菌との鑑別は可能です。
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