07/07/18
■ レンサ球菌分離のための選択培地
【質問】
 現在, 蜂窩織炎の膿汁から口腔レンサ球菌およびミュータンス・レンサ球菌を分離しようと思い, MS培地, MSB培地を使用したのですが, 発育するはずのないグラム陰性桿菌が多くみられました。何故, 選択培地として機能しなかったのでしょうか??? お返事, お待ちしています。よろしくお願いします。

【回答】
 MSB寒天培地はレンサ球菌用の選択分離培地であるMS (Mitis-Salivarius )寒天培地にバシトラシン(0.2 units/ml)とショ糖(最終濃度20%)を添加して, レンサ球菌属の中でも特に“ミュータンス群”レンサ球菌を選択的に分離・鑑別するために処方された培地です。基礎となるMS寒天培地の中に亜テルル酸塩が含まれ, これにより主にグラム陰性菌の発育が抑制されます。グラム陰性菌の中ではビブリオ属菌が亜テルル酸に抵抗性を示すとされていますが, その他のグラム陰性桿菌であれば通常発育が抑制されるはずです。分離されたグラム陰性桿菌の菌種は何だったのでしょうか??? このような場合, この発育してきたグラム陰性桿菌をきちんと同定しておくことは, 将来, 大変役に立ちます。

 両培地に“グラム陰性桿菌が多くみられた”理由は明確には分かりませんが, 選択剤の劣化や量不足なども一つの理由として考えられるかも知れません。亜テルル酸塩は市販の粉末培地などに最初から添加されているものではなく, 粉末培地を溶解後, オートクレーブ滅菌し, 50_55℃まで冷めてから亜テルル酸溶液を添加することになっています。添加する亜テルル酸溶液の量(1 ml/liter of Bacto Chapman Tellurite Solution )や, 添加する際の培地温度なども選択性に影響を及ぼす可能性があります。MS培地の使用書には, 亜テルル酸溶液を添加後に加熱してはならないことが明記されています。この他にも培地作成後に時間が経過して古くなった培地では, 選択性が低下することも考えられます。上記の点に注意して再度培地を作製し, 発育性を確認してみられたらいかがでしょうか。

(公立玉名中央病院・永田 邦昭)


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