09/05/01
■ 緑膿菌の菌集落が硬くなった!!??
【質問】
 ●●県の製薬会社・品質管理課の■■と申します。お世話になっております。

 表題の件についてですが, JP15sp1に従い管理・運用している「つもり」なのですが, 最近, 緑膿菌のコロニーが“硬くなった”気がします。

 前培養を行ったSCD平板から白金耳でかきとり, 希釈液中に分散させるのですが, 以前よりも白金耳から離れがたくなり, また完全に分散しなくなりました。現在は上澄みを用いており, 菌塊を吸わせずに段階希釈を行っているためか, 比較的安定した菌数が出ています。緑膿菌はATCC株の2代目を−80℃で凍結保存させたものを解凍し, SCD・Bで2日間, 30〜35℃で培養後, SCD・A斜面培地に塗抹・同条件で培養したものを冷蔵保存し, 2週間毎に継代を行っています。培地性能, 試験適合性などに用いる場合は, 前日にSCD・A (たまにLP) の平板に斜面培地から直接塗抹・培養して用いています (この段階ではさほど硬いという印象はありません)。

 去年の秋頃までは白金耳から離れにくい程度で, 分散せず, 菌塊が漂っていることはなかったかと思うのですが・・・

 基本的な緑膿菌の性状などをよく知らずに使っているためと考え, 質問させていただきました。お手数をお掛けしますが, よろしくお願いいたします。

【回答】
 緑膿菌のコロニーが“硬くなった”経験はないですが, 白金耳から離れがたくなり, 溶液に完全に分散しないことは理解できます。緑膿菌は細胞外多糖類を分泌し, ムコイド産生型と産生しないもの (非ムコイド型) が存在します。ムコイド型の緑膿菌は菌体の周りに粘性の膜を形成し, このような状態になった菌が集まると, 大きな膜状になります。これは“バイオフィルム”とも呼びます。培養物が粘性のある膜を形成したことが原因で, 白金耳から離れにくく, 希釈液に容易に分散しない現象が起きると考えます。特に古い培養物, あるいは乾燥した培養物 (冷蔵保存したスラント) などではよく見られる現象と思います。これを回避するためには, なるべく新鮮な培養物を使うことを勧めます。

(テクノスルガ・ラボ 立里 臨)

【質問者からのお礼】
 ご回答ありがとうございます。表現がよくなかったため, お手数をおかけしました。大変, 勉強になりました。今後ともよろしくお願いいたします。


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