09/11/16
■ 検体採取済みの血液培養ボトル
【質問】
 先日は, 喀痰検査で多くのことを学びさせていただきました。今回は, 血液培養に関して是非ご教授下さい。

 当診療所 (有床診療所です) は, 検査すべてを外注化しており, 外来のない休診日は検体回収がなく, 臨時の際には, 近隣のラボへ検体を搬送する費用などで, 平日より1万円以上の出費を要す状況です。こんな中, 当診療所所長より「土・日に採取したカルチャーボトルを室温保存しておいて, 平日に提出することはできないか」と質問を受けました。私の認識としては, なるべく早くラボへ提出することで, 血液内の菌を死菌させることなく培養できるのではと思っています。室温は24〜25℃程度には保たれてはいますが, このように2〜3日, 室温放置した検体を提出することで, 有効に培養を行うことが可能なのでしょうか。ぜひご教授下さい。

【回答】
 この場合、ふたつのことを考えて下さい。

(1) カルチャーボトル内の細菌は, 温度さえ至適条件 (35℃) になれば、直ちに旺盛に発育できる状況にあります。従って、室温は至適とはいえないまでも, 細菌の発育が多少は可能な温度です。回答者なら, まず小さな35℃のふ卵器を購入します。外注業者がもって行くまで, 血液を入れたカルチャー・ボトルを多少でも培養するためです。迅速な菌検出にもなります。外注先の検査方法はわかりませんが, この場合にはラボに早く送ることよりも, カルチャー・ボトルを早く35℃にして培養を開始することが優先します。

(2) 「土・日に採取したカルチャー・ボトルを平日に提出する」ことについては, 多少の不安があります。(1) のように小さなふ卵器を購入してカルチャー・ボトルを土曜日に培養し始めた場合, 例えば翌日の日曜日に陽性になっても, その陽性をだれも判定することができません (本当は培地の濁りだけで判定できるのですが・・・さらにグラム染色できれば診断もつくのですが・・・)。平日の翌々日、月曜日まで結果が届かないことになります。結果的に患者さんは不利益を被ることになります。

 このふたつのことを考慮して, 診療所のポリシーを決定されては如何でしょうか。最良の方法は, 小さなふ卵器を購入し, 培地の濁りから陽性が判定でき, グラム染色してある程度細菌の種類を特定でき, 濁ったカルチャー・ボトルを外注先に渡して細菌の同定と薬剤感受性試験を依頼するというものです

(琉球大学・山根 誠久)
【質問者からのお礼】
 今回も明快な回答ありがとうございました。確かに患者様のことを考えれば, 早期の提出が重要ではあるのですが・・・。その後, ラボに確認したところ, 室温保存でも問題ないと回答を得ました (場合によっては発育に時間がかかるとのことですが)。今後もよろしくお願いいたします。


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