08/09/29
■ サルモネラの培養方法
【質問】
 サルモネラの検査について教えてください。

 私は現在, 細菌検査の仕事を行っています。そこでサルモネラの検査についてですが, 前培養としてラパポート培地 (栄研化学) を使用し, 24時間程度培養した後, DHL寒天培地 (日水製薬) に塗抹しています。ここでDHL寒天培地での培養方法といたしましては, 「37℃で20時間程度」と培地本体には書かれています。「食品衛生検査指針」には24時間程度ですが・・・疑問としまして:

(1) 20時間程度で判定するのと, 48時間程度での判定では違いがありますか???
(2) 20時間でコロニーが確認できない場合, それ以上培養を継続する必要はありますか???
(3) 食品などでは20時間では生えにくい場合があるのでしょうか。それとも24時間以上ではサルモネラと判定する必要がないのでしょうか???

 教えてください。無知な質問になるかもしれませんが, どうぞよろしくお願いします。

【回答】
「食品検査指針」におけるサルモネラの検査は, 冷凍食品などの損傷菌を考慮する場合とそうでない場合とでは検査手順が異なります。損傷菌を考慮する必要がある冷凍食品などでは, 最初に緩衝ペプトン水などの非選択性の液体培地で増菌後, 選択性のある液体培地で選択増菌培養を行い, 選択分離培地による分離を行います。それ以外の検体では選択増菌培養から行います。

「食品検査指針」には, 前培養 (緩衝ペプトン水など), 選択増菌培養 (ラパポート培地など), 選択分離培地 (DHLなど) の培養温度・時間についてそれぞれ, 35±1℃・18±2時間, 43±1℃・18時間, 35±1℃・24±2時間と明記されています。

日水製薬のDHL寒天培地の培地ボトルのラベルには「37℃で20時間前後」と記載してありますが, 本培地は食品検査のみならず, 臨床検査においても使用されるため一般的な記載にしてあります。実際の使用の際には, それぞれの分野での検査指針, マニュアルに則って行うことを推奨します。

・質問 (1): 20時間判定後, さらに48時間まで培養を継続した場合, 過剰発育に原因する硫化水素による黒色反応が変化したり, わずかに含まれていたサルモネラ以外の菌が発育してくることが想定されます。

・質問 (2)および(3): サルモネラの初発菌数が少なかったとしても, 選択増菌培養の段階では大量に増菌されていることが前提になります。また生物である以上絶対ということはあり得ず, 20〜24時間程度では発育しにくい場合がまったくないとはいえません。しかしながら, 検査指針とはそれらリスクを含めたその段階での最良の方法と考えられますので, 検査指針に従った判定することを推奨します。

(日水製薬・三品 正俊)


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