09/09/07, 11
■ 生菌・死菌を鑑別できる抗酸菌染色
【質問】
 私は病院の細菌検査室に勤務する臨床検査技師です。異動で本年4月から病院で勤務しております。いつも質問コーナーを参考とさせて頂いております。

 抗酸菌について質問いたします。抗酸菌染色 (チールネールゼン染色法) にて陽性の報告を臨床側にしますと, 「生菌ですか?」と問われることがあります。私の勘違いかもしれませんが, 以前, 生菌しか染まらない抗酸菌染色法を聞いたような覚えがあります。しかし, 出入りの問屋さんや, 近くの大学病院にお聞きしても解かりませんでした。古い記憶で定かでなく, 思い違いかもしれませんが, もし生菌と死菌との区別のつく抗酸菌染色法がありましたらお教えください。よろしくお願いいたします。

【回答】
 ご質問についてお応えします。回答者としては「死菌/生菌の鑑別染色法はない」と思います。結核菌に限らず, 顕微鏡下に観察される菌体が「生きているのか」あるいは「死んでいるのか」は誰でも知りたいことで, いろいろな研究が行われています。最近の気が付いた研究を以下に示しますが, とにかく「染色」で生死の識別可能な方法は現時点では開発されていないと思います。

〔参考文献〕
(1) Soejima T et al.: Discrimination of live, anti-tuberculosis agent-injured, and dead Mycobacterium tuberculosis using flow cytometry. FEMS Microbiol Let 294: 74〜81, 2008.

(2) Flekna G et al.: Insufficient differentiation of live and dead Campylobacter jejuni and Listeria monocytogenes cells by ethidium monoazide (EMA) compromises EMA/real-time PCR. Res Microbiol 5: 405〜412, 2007. 

(信州大学・川上 由行)


【質問者からのお礼】
 質問へのご回答ありがとうございました。臨床サイドは, 気管支洗浄液から抗酸菌陽性の報告があると, どうしても生菌か死菌かを知りたいと思われるようです。臨床像や細胞診の結果を総合して検討頂く様お願いしたいと思います。ありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。


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